fragile〜真夏のキセキ〜

 あなたを知ってしまった この手はいつもあなたを探し求めている

身を焦がし 叶わぬ思いを抱えるこの体で どこにいけるんだろう

触れて壊れるから 思いが自分もあなたをも変えている。

その思いはきっと、、、、。

 

見上げた空はいつも白々しくまぶしい青空 雨上がり特有の匂い
忙しすぎた日々も終わって 足場も見えない 先も見えない ないないばっかりで意味もない それが今の現状。繰り返すのはため息と言われた言葉


「案外つまらないやつなんだな…。か、、」

それでも何かを繋ぎ止めたくて でも言葉も出なくて吐き出す言葉はすべてが宙に浮かんでしまう。
考えることも動くことも 何もかもがすべて億劫に感じるこの頃の自分に・・そんな自分だから果たせなかった 果たされなかったんだろうか?

どうでもいいイメージ、夢ばっかり見ていて 都合よく生きていたから?もっとしっかりしていなきゃとか ふいに取り残されてダルイ体起こしてがむしゃらに走って ただただ時間だけが流れてしまう。

 「、、不毛、、」定番になっている台詞を言いつつ またいつもの生活が始まる。

「起きぬけ早々 第一声がそれ?」

いつもの生活に有難い 人の声の主を見上げた。ってよりは至近距離から 大きな目が覗きこんでいる。
「ここ夜になると、、」

まさかお化けとか 幽霊が出るだなんていうんじゃないだろうな?

起きたての頭だからっているかいないかはっきりとしないものを信じていない自称現実主義者の自分に

「愛好家が夜な夜な集まる場所だから」

「愛好家?」

「そ。《若くてぴちぴちな若者ならなおベター》な死体愛好家がね」
いまどき ぴちぴちって言葉死語に近いぞ、、。
「し、、死体?って」

「人が来そうにない場所に 投げ出された体 しかも若者だから世間一般的に見て将来を懸念して命も投げたのかなぁって。ね 死体さん」

「死体じゃねぇよ!!

勢いに任せて怒鳴り声と共に体を起こしたが
急に起き上がったから焦点が定まらず 頭がぐらっとしてきた。
「急に立ち上がるから立ちくらみだね」
今度はそうならないように慎重に体を起こしつつ
「だから、、あれ?」
視界の先には声の主がいない。
「どうしてココにいるの?死体のお兄さん」

左右見回してもいない 声を頼りに視線を下に向ける。

「、、、。死体じゃないっていっているだろ」
真下にいる声の主は見上げて

「寝息立てていなかったし、ぐったりしていて 動かなかったから」

「ちゃんと黎夜(れいや)って名前があるんだから 死体死体って連呼するな」

「だから お兄さんというオプションつけたでしょ」

あくまでマイペースな体はちっさいが口は達者な女の子は勝手に自己紹介を始める。

「私は朝雅緒(あさがお) よろしく」

「はぁ」

「あ、私が平均身長よりも13cmも小さいMAXどちびだから相手していられないって思っているでしょ」たしかに最近の女の子にしては発育不良だなとは思うが
「マックスは言いすぎだぞ」

見事な造語にさっきまでのいらいらはどこか消えて吹き出してしまった。

「死体愛好家は嘘だけど とりあえず笑えるなら大丈夫」
外見とそぐわないクールな対応と配慮と毒舌に呆気に取られっぱなしで「どこまでが昨日でどこからが明日なのか分らなくなって 何も思い出したくないから寝ていた」
「下手したら土の肥料になってしまうよ」
改めて辺りを見回すと木と草だけの殺風景な場所 そこに人間が転がっていたら誰だって「誤解されても仕方がない環境だな」
「でしょ。今冬じゃないから 夜になると蚊はもちろんいろんな動物が活動する場所だから。とりあえずはい」


手荷物のバックをあさり 一個のパンを差し出した。

「近くのパン屋さんのものだけど美味しいから食べてみて」

「いいよ。別におなかすいているわけじゃ」
ぐう〜〜〜〜と盛大な音が否定をぶっ壊していった。
「寝ている間鳴っていたよ」
かっこ悪すぎ、、。初対面の女の子に寝ているところ、立ちくらみ、腹の音まで聞かせてしまって。けどお腹すいているのは確かだから 渡されたパンを口に運んだ。
「どう?」
小さいときには大好きだったけど ここ何年かは食べていないクリームパンの感想を求められて
「おいしい」

 今朝食べたものの味も覚えていないのに なぜかこの甘ったるいだけのクリームパンはどこか懐かしさもあり、心地よくその甘さが口の中に広がっていく。

「お腹がすいているだけじゃなくて、ここのパンは格別だから あとは考えすぎてしまっている時には糖分補給が必要だから」
言っていることは確かにそうだけど
「まさか、、そのバッグの中すべて」

「クリームパンだよ」
自分が1個を完食し終わったときにすでに朝雅緒はすでに食べ終わって 両手には3,4個目とクリームパンが握られている。
「巨大なクリームパンを食してみたい、、。」
どうしよう こいつ目が本気だ、、。でもクリームパンを前にしてのあどけない笑顔とほうばる仕草がやっと外見と合致してきたぞ。
「それだけ食べると血管の中クリームになってしまうぞ」

「失礼ね。普通太るぞって言わない?」

「それを言ってもすぐに切り返すことぐらい朝飯前だろ でも今は夕方だけどな」
今は朝じゃないと言われる前に ボキャブラリーが懸絶した差があるから先に指摘される前に自分から言った。

「黎ちゃんの事待っていたからこんな時間になっての」

「いきなりちゃんずけかよ、、。」

「昨日も今日も分らないんだったら童心に帰ってみてもいいんじゃない」
いきなり初対面の相手からちゃんずけされるのに抵抗はあるけどどうしてか名前呼ぶときのトーンが優しい。
ちっこいくせになーにいってんだか」
「ちっこいはよけいでしょ。黎ちゃん」
朝雅緒の額にでこピンをしたから 反撃にひざかっくんを食らった。
「不意打ちとは卑怯なり」

「身長差を考慮と私にできそうなことはこれかアリキックぐらいしかないと判断して」
続けて第二段のアリキックを披露しようとしているから寸前の所で避けたが
「ぎゃ」
避けたはずだったが足に引っかかって豪快にこけていく朝雅緒を支えようとして二人とも転倒してしまった。
「いたた、、大丈夫か?」

「、、とう、、黎ちゃん。そろそろ暗くなっちゃうね」

「え?とう? 砂糖か?
起き上がるついでに土を払いつつ、からかい台詞をかける。
「ちっがう!!「ありがとう」って言いたかったの」
平静を装っているみたいだけど 転倒したままの状態だからしっかりとつかまれている部分から微かな手の震えが 視線をそらした目をみて 結構かわいい所あるじゃんと
「どういたしまして。もうそろそろ離してくれないか?」

「え?ああ、、。さっきまでの黎ちゃん放っておいたら消えてしまいそうだったから」
しっかりと小さな温もりが服越しから伝わってくる 久しぶりに人肌に触れる 不安定な気持ちがほぐれていく プレッシャーも軽くなっていく

「黎ちゃん?」離した手を無意識に引き寄せていた。離せと言っていたのに、また掴んでいるんだから一体自分が何をしたかったのかこの時には分らなかった。
「悪い、、。」
自分でもわかる緩慢な動きで細い朝雅緒の指先を離した。何 名残惜しんでいるんだ自分!?
「じゃ、真っ暗になる前に私帰らなきゃ」

一向に何も言わない自分と空間 一体その大きな目で自分のどこを映しているんだろうか?
まずい、、何か言わなければ

「また会えるか?」よっぽど変な顔していたのか少し含み笑いをしながら
「今度は黎ちゃんからそういわれるなんて」小さな声で呟いていたのに気付いてなかった。

「うん。またここにいるから」
もしあの時会えるか?なんて言わなかったら あの場所に行かなかったら この出会いはなかったのかもしれない

 「黎ちゃん。黎ちゃん」
「お前、、朝から元気だな、、」
何回も会っているうちに 分ったことは名前と好きな食べ物と低血圧気味で夜型の自分に比べて朝方って事 それが自分にわかるすべて
「だって朝って新しい日の始まりのだから」

「朝なんてこなきゃいいって思ったことないのか?」
困ったように 言葉を選びながら
「そう思うことはあるよ。光は見たくない所、見せたくない部分も曝け出してしまうから」

「何もかも闇に包まれてしまえば 何も考えなくてもいいからな」

「たしかに育てた花が枯れてしまってその枯れた姿を見なきゃならない時いつまでも綺麗なままの姿でいて欲しかったと思うけど」

 見たくない所 いきつくひまもない哀しいスピードで周りだけが動いていて自分だが置いていかれている 時間だけがむなしく流れていく今の自分なのかもしれない。

「つまらないだろ?気の利いた言葉も言えない、宙ぶらりんでただこうやってここにいるだけの自分と居て」
「そんなことないよ。黎ちゃん」

「自分の名前も黎夜 真っ暗闇って事だな」
真夜中に生まれたからという安直な理由でつけられた名前を馬鹿にされて大嫌いだったけど

「黎は早朝、夜の明けきらずに暗いところで 反対の言葉で『黎明』って言葉があるけど何かが始まろうとするときの例えという意味もあるんだから好きだよ黎ちゃんの名前 どうして笑っているの?」
「それと似たような事前にもいわれたから」
だからこんなにも居心地がいいのかもしれない 今はもう過ぎ去った時間の中で一番大切だった思い出の中の友人と似ている。

「大事な人?」
「ああ。その大事な人を傷つけてしまったからな」
自分の名前を初めて誉めてくれた友人がいた。趣味も共通点も少ないが側にいて落ち着く 同年代とは思えないぐらい一人落ち着いていて頼れる自分の兄って感じの友人馮河。そんな友人が引っ越してしまうって事を自分だけが知らされていなかった事に腹を立てて

「お前なんか友達じゃないといってしまったんだね」まとめ台詞を自分が言う前に朝雅緒から言われてしまった。
「ガキだった いつも側にいたからずっとこのままでいられると思った この絆は揺らぐものじゃないと思っていたから自分だけ教えてもらってなかったから実は嫌われていたとおもって あんな事いってしまった」
すごく悲しそうな でも何もいえない馮河の目に耐えられなくて悪態ついてしまった。
「本当はその人って黎ちゃんは大切だから言い出しずらかったんじゃないかな。
離れてしまうと伝えたときに そんな寂しい顔させてしまってよけいお互い辛くなると思うよ」
「いまさら後悔したって馮河はここにはいないし、こんなに時間が流れてしまったんだよ」
失いたくないから 心の中に何も入れないと虚勢を張ってそのツケが今のつまらない奴と評価されるきっかけになってしまったのかもしれない。

「きっとその人は黎ちゃんの気持ち分っているよ」

「何も知らない奴が憶測でものをいうなよ!!」

「後悔するならちゃんと伝えなきゃ まだ時間もあるから」

「黙れよ」

「やだ。またいえなかった事言い切れずにすれ違ってしまうのは嫌だから。」
あきらめで逃げていた思いを 忘れていた感情まで蘇ってくる。強い視線にぶつかって 退屈な日々の中の何かが変わると思ったから毎日ここにきていたのかもしれない。恋や愛じゃなくて出会ったときから強く鮮やかに 何時の間にか朝雅緒に惹かれていた
「どこにいるのか分らない気持ち言えるわけないだろ」

「今度はちゃんと言ってくれる?言える?」

「『今度』ってどういうことだよ」

「もうすぐだよ、、。もうすぐで私の時間も終わってしまう」
振り返って見せた笑顔がとても儚くて 思わず言葉が止まる。
「私が黎ちゃんのお願いかなえるから 私じゃなくその人に自分の気持ちを伝えてね」

「おい 朝雅緒」
吹き抜けていた風が止まり 夕闇でどんな顔しているのかわからない。
「初めて名前呼んでくれたね黎ちゃん」
その言葉をいって闇と共にきえてしまった。

 「『今度』って何なんだよ、、。」それに私の時間って何をさしていたんだろうか?また朝になったらひょっこり姿をみせるとおもってここにきているけど一向に姿もなく そこにあったのは枯れた朝顔だった。朝顔と言えば馮河と一緒に朝顔の観察日記して収穫した種をどこかに蒔いたことあったな。
「やっぱり枯れちゃったんだ、、」
聞き覚えのある声が聞こえ
「朝雅緒!!」

「黎、、ちゃん、、?なの、、」
戸惑いながら立ち尽くす体を抱き寄せて 直に振るえと鼓動が聞こえてくる
「あんな別れ方するなよ、、」

「引越しの事黙っていてごめんね」
引越し?
「小さいときには男の子として育って 今は後継ぎがいるから女の子に戻れたんだけどよく私のこと覚えていてくれたね」

「もしかして、、馮河?」
そういえば家は有名な歌舞伎役者の父がいる家だったか。後継ぎがいないからで 男として育てられて引越しをしたのは後継ぎが生まれたから急に女に戻れと言われても ここにいると周りがそうさせてくれない、、そんな理由で新しい場所でまた始まりをきりたかったから
「ずっと黎ちゃんの事気にしていたんだ。ちゃんとお別れしなかったから」

「自分が悪いんだ。友達なんかじゃないって悪態ついて」

「それが本心じゃないってわかっていたよ。辛い言葉言わせてしまったから
・・あのさ黎ちゃんアメリカ式の挨拶はいいんだけど苦しいよ」
「本物かなぁって思って、、」
戸惑う顔と今まで会ってきた活発な笑い顔がダブって見える。すれ違った気持ちを再びこうやって交われたのは きっと奇跡 {枯れてしまった分の来年はたくさん種を蒔こう}夕方しぼんだ花をみてがっくりしているから そう切り出したのは自分。

「何年も経ってしまったから その分一杯一杯種を植えようね」持っていたバスケットから大量の種とクリームパンがつまっていた。

 おまけ 実は黎夜は馮河を名前だと思っていた、、。