「私は今からこのカプセルに入って人形になるの」
生気のない はじめに聞いた声とは別人の声で私に教えてくれる。
「人形になるって、、、?」
ーここに来た人は日々進化していく人間生活のスピードに疑問を持ち 次第に今世を生きられないと感じた人がくる場所ー
「あなたは今世が嫌いだから?」
何も考えずに自然と聞きづらい尋ねに微笑を浮かべ、何も言わずにカプセルに入っていく。
開いた扉が閉まると足元から薄い赤色の液体が溢れてきて体を包むまでになっていった。
苦しくはないのだろうか?と思いながら水の中でゆらゆら揺れている姿が、とても綺麗すぎてでも人間じゃないように見える。
目の前の不思議な光景に魅入りながら、体はだんだんとカプセルの方へ 無意識に女性の方へ指を伸ばそうとすると景色がゆがみそこにいた女性もカプセルもなくなっていた。
その代わりに沢山のショーウィンドーで飾られている人形というより、リアルに人間に近い人形に囲まれていた。
一人ぼっちという寂しさはなくて、逆に安堵感を感じていた。
「私は人形になるの、、」「一日一人がここにくる」の言葉が浮かんできて
「まさか、、この人形達は、、」
ガタガタ震えが止まらない体を両腕で抱きしめて、言葉をつむぎだした時
「お察しの通りです」
さっきの女性と男の人がいつのまにか私の目の前に立っていた。
「あなた達、、って一体何者なの?」
「私はこの『蝋人形の館』の案内人赤光です」
「いや名前とかじゃなくて」
この人形についてを聞こうとするよりも先に
「久しぶりにここへ迷い込んだ人のお相手を頼みます」
「はい」
その言葉を聞いて赤光はまたどこかへ消えていった.。
薄暗いランプがほのかに光を放ち人形に囲まれて、女二人いる空間。逃げたくてもどこにも逃げられない状況
「さっきのあなたの質問に答えてなかったわね」
沈黙を破り近くにあった人形の首筋に指を当てると赤い石が見えた。
「契約を交わしたら こんな風に人形になるの。何も考える事も、聞く事もなく飾られる人形にね、、、」
女性はうっとりとした目で人形を見つめ話し出す。
「あなたは他の人が生きている所を見せつけられて後悔しないのですか!」
危うくこの人に飲まれそうな感覚がさっきからずっとしていたから、あまり大声をださないけど知らず知らずに声をあげてしまった。
「私だって初めからここへ行きたいとはおもっていなかったわ。でもね人間として生きることに疲れたの。
日々周りに合わせて、笑いたくもないのに笑う そんな自分に 生活に」
「そんなことは私だってそうですよ!でも、、」
必死で人形になろうとしている女性を止めようと 声をあげにらむように私は女性を見ていたのかもしれない。
そんな私を静かに受け止めて
「分からない?」と小さく声を殺して一呼吸間を開ける彼女の話に耳を傾ける。
「私の顔はもう能面なの。人としての感情も、不安も涙も喜びも 失っているの。もちろん人形となる事に対しての恐怖感なんてないわ。
そんな私が人間として生きていても何の意味もない蝋人形となれば今のまま美しい肉体でいられて、好きな場所にいけるのよ」
自虐的な台詞を人事のように話している女性に
「違う、、違います、、」
ただ空しく否定を示す言葉を呟くけど 次第に色あせていく。
笑っているはず私が視界の奥で動いて [毎日順調 毎日楽しい 不満なんてない]そう言っている私の足元がドロドロと崩れていく。
どうすることも出来ずに叫んでも、泣いても女性はおろか人形達は黙ったまま足掻いている滑稽な私の姿を見て
「あなたは私を批難していたけど ここに迷いこんだから人形になっていく気持ちも分からなくないでしょ?」
叫んでも、泣いてもその声は届いていない。
カチカチカチ どこからか時計の音が聞こえ 同時に足元の崩れがなくなっていた。
「そろそろタイムリミットです」
泣いていた私にハンカチを渡してくれた。
「もうお別れね」
赤光の手を取ると闇の中に消えていこうとする女性を止めようとして 二人に向かおうとしても追いつかない。
息をすることが苦しくて、体が崩れ去るように痛みが走る。もしかして、、私も女性のように蝋人形となってしまうのか?と恐怖感が出てきた
でもその方が楽かもしれない もう生きていて苦しむ事もなく、支配されたままだったら
脚色されたニュース、人の目、人の中に生きているけど本当は孤独なんだと思い知らされる事もない そんな世界から開放してくれるならば、、
記憶の底に眠る答えのない答えを探そうとしているけど 見つからない。人形となっていく女性を見ているのに恐怖感も徐々に薄らいでいく。
「あなたはまだここにくる人ではありませんよ」
さっきまでの硬質的な声から諭すような声で
「あなたは迷いこんだだけです。でも、、もしまたお会いする時にはその石があかくなるでしょう」
軽く青い石を触ると意識がなくなって 目が覚めたときには自分の部屋のベットだった。
今までの生々しく感じていたことはすべて夢だったかもとベットから起き上がった時さっきの青い石が落ちていた。
もしもう一度あの館に行くときがあれば それは私が蝋人形として選ばれた時なのかもしれない。