魔弾 BGM T.M.R「Thunderbird」 Iceman「Lost Complex」
1999年最後の戦いが終りミレニアムというスタートに入っていった。
そばにいた人も 学校も 環境もすべて年だけじゃなくて自分の周りも変わっていった。
11歳の時につけた水晶ピアスを確かめる。
日によって色が赤から青へ変わる不思議なピアス ピアスが運命を決める、変える力があるって聞くけど今なら信じてもいい。
世界でたった一つのピアスを作ってくれた人がいなかったら私は・・・。物思いにふけながら外を見る。降りしきる雨が街角の隅にまで降り注いでいく。
あの日と同じように。
一向に止まない雨を鬱陶しいと感じながら 徐々に体の中の体温を奪っていく。
張り付いていく服と体 ずっしりと感じる重み雨もこの重みもすべてが私を責めてるように容赦なくどれくらいここにいるのか 時間間隔も分らなくなっていく思考。
瞬きをして流れ込む雨から目を背けたかったけど今度はあの人の笑顔が見えた。
ごめん・・・これくらいしか言えない。言い表せられない。
薄れゆく意識 だけど自分自身を許せなかった。それだけしか残っていない
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「いたぞ!ここにいるぞ!」
「くっ、、、ご丁寧に見つけてくれてご苦労様」
皮肉を飛ばし逃げようとするけど もう走る力も残っていない。
「逃げ場がないぞ」下卑た笑みを浮かべる魔族
それは普通の人間だったらの話だが
「フン」
鼻で笑い 背中から羽根を出して上空へ逃げる。
後ろも見ずにできるだけの速さでその場を離れて廃墟と化したビルに身を隠した。
これが私 普通の人間じゃない能力をもっている。
前世でたくさんの人を殺めてきた報いでもあり その過去を清算したいから前世の記憶と能力を持ちながら 今を生きている。
神との契約で今の現世にはびこぶ魔族を退治していく事で少しでも清算したいこの苦しみから解放されたかった。
例えどんな体を持たされても契約通りに任務を果たす。それが私 浅倉要の使命とずっと信じていた。
「こんな力があるから守れなかった」
埃っぽい壁にもたれかかり重力に任せて下に体を沈める。前世は大天使の母と魔族の父を持つ 俗に言う『ハーフ』の力。
持って生まれ天使特有の治癒能力と 魔族の人をあやめる潜在能力を持っている貴重種と周りから言われつづけ『血を飲むと能力が上がる』理由から 迫害、命を狙われつづけた。
戦う気がなくても 戦意無い者には死がまっている。
死にたくない 殺されたくないその一念で向かってくる魔族を倒していくうちに気がつけば
ぽたっ・・・生暖かい液体が皮膚を刺激した。
そっとそれを拭うと血だった。
「ようやく見つけたぞ」
悪戯に能力を使うよりも 残った力すべてぶつけていかないとヤラレル。
ビルの屋上まで飛んで行き フェンスまで身を置いてギリギリまで追い詰める。自分自身を負けられない。
血のこびり付いた魔手を紙一重で避けて 奴の体に残った力すべてを込めた術を叩き込んだ。乾いた断末魔とともに体がいう事を聞いてくれない事に気が付いた。
しまった・・。
私の体は屋上からすごいスピードでおちていく。
羽根を広げようとしても散々濡らしてしまったから開いてくれない。少しだけ空気抵抗をし落ちるスピードが緩まっていくけど無傷で地上に落ちるのは無理だろうなぁ・・・。
やけに長く感じる落下速度と激しい音と痛み目を開けると見事に穴が空いた天井が見えた。体を少し動かしても痺れと激痛が走る。
そして羽根も消えてしまった。力がなくなっていくのを感じながら意識も消えた。
「・・ん」
まだ生きているの私?手始めに左手を上げて 天井を見る。
意識が消える前の天上はここにはなくて 体の痛みも薄まっているから上体だけを起こす。
一緒に流れ出る止まらない涙の理由 どうして?と思うよりも先に
「ヤナギ・・・」
もうどこにもいない 戻ってこれないあの人の名前を呟く。
やり場のない思い 指先がしびれてくるほど 横になっていたベットで指先を叩きつけて
「私が・・」
いなかったら・・。ぼろぼろと流れる涙と消えない憎しみを叩きつける。
叩きつける手を止められてはっと気がついた。
体の向きを変えてみると目の前に男の人が立っていた。
「一週間目を覚まさないから心配しましたよ。お体大丈夫ですか?」
ゆっくりと私の手を離して柔らかい口調で話し掛けて
「いたく・・ないです」
ふと自分を見ると右手だけじゃなくて所々包帯が巻かれていた。
「今温かい紅茶をもってきますから」
この人が助けてくれたんだ。掴まれた個所を触りながら
あのままほっといてもよかったのに・・・と思っている。だって私は・・・
「赤光兄ちゃんできたよー」
勢いよくドアが開いて元気のいい男の子がやってきた。
「おまたせ」
持っていたお盆から紅茶カップを赤光と呼ばれた人と私に渡す。
「え?」
なにこれ・・・紅茶の中にりんごが固体として入っている。
「あの・・青蓮君。これは一体?」
ニコニコ笑っている青蓮という子に赤光は苦笑いをしながら質問をする。
「紅茶だよ」
「それは分っていますが、僕が言いたいのはこのりんごです!」
「え?アップルティだよ。ちゃんとりんご入れて」
「そうじゃ・・・すみません今から僕が煎れなおします」
はじめて見るりんご固体イン紅茶に気をとられていたけど
「いえこれでいいですよ。ありがとう」
その間二人の会話は
「これじゃりんごがお風呂に浸かってるだけですよ」
アップルティの作り方を説明している赤光に
「えー違うんだ」
この子天然ボケ・・・?二人のかみ合っていない会話を聞いていて思わず吹き出してしまった。
「じゃりんごいただき♪」
赤光の紅茶からりんごを取り出し口の中に入れる。
「わ〜微妙な味・・・」
苦虫かみ締めるように顔をへこませる青蓮
「これ飲んで口直ししてください」
何の隔てもなく会話とその空気から優しい音が聞こえてくる。
特殊能力として私は人の心を「音」として知ることができる。
感情も何もかも些細な事も音として聞こえてしまう体質 毎日音が消えないもう聞こえなきゃいいのにと思ったけど めったに聞けないこんな音を聞くと救われる。
二人の心の音がとても心地いい。
「どう?オレのいれた紅茶」
「とっても美味しいよ」
味とかじゃなくて心に温もりを与えてくれる紅茶に対して それを聞きにぱっと笑う。
少し時間が空いて
「僕は赤光といいます。こちらが」
赤光よりも先に自己紹介を始める。
「オレは風我青蓮。青蓮って呼んでくれよな。君は?」
「私は浅倉要。あ・・」
「どうしました?」
「・・・・・私天上に穴を開けたんだよ」
この二人がどこか分らないけどここに連れて行ってくれた事は穴も放置してあるって事だよね?
「ああ。それなら心配要りません」
赤光の台詞を聞くよりも先に闇雲に部屋を出て行こうとしたら
「要。大丈夫だって。琥珀にやらせたから」
私の行く先を青蓮が立っていて 動きを止める。
「琥珀?」
耳を済ませるとどこかからトンカチの叩く音が聞こえる。
「ここの鬼案内人だけど手先は器用な。っていてー!」
青蓮の頭からトンカチが落ちていた。
「威嚇だ。これ以上言うと本気で狙うぞ」
って・・もう当たっているんじゃ・・。
「先輩。一息つきませんか?」
頭をさすっている青蓮を気遣いながら 赤光が間に入る。
赤光の言葉通り 琥珀と呼ばれている人は降りてきてそのまま移動する。
移動中ここが『蝋人形の館』と呼ばれる由来とここでなにをしているのかを聞きながら大きなテーブルのある部屋に案内された。
初対面しかも男の人と座って話もできないからお茶の用意をする赤光を手伝ってテーブルに出す。
「今日は違うな」
カップを離して琥珀さんって言う人が赤光にいった。
「ああ。要ちゃんにいれてもらったんですよ」
ちらりと私を見て
「こっちへこい」
何か不都合があったのかな?おそるおそる歩みよったら腕を引っ張られ
「な・・なにするのーー!」
琥珀さ・・いや琥珀から離れてキスされた頬をガードしながら訴えた。
「褒美」
お茶をいれてもいいって言われたから3人の心の音を聞いて飲むお茶を選んだから趣向にあったんだろうか?でも・・でも
「ここでは俺がルールだ。お前天井の穴開けただろ?その分働け」
「え・・・」
そりゃ天上壊してしまったけど。
「今日からお前は俺のドレイ」
な・・なんなの?なに?このとーとつな展開は?夢なら覚めてくれと思って隣にいる青蓮の頬に触った。
「いちゃい・・・・よ要」
夢じゃないんだ。と認識しながらボーっとしていたら
「分ったら働け」
こ・・この人本当に鬼だ。と同時に頬から熱が回ってぼろぼろと涙が出た。
今まで全くされた事ないことをされた事の驚きやこの流れにスピードに追いつけない事も重なって
涙を拭う事も忘れて琥珀の方を見ていたら
「あんまりその顔しない方がいいぞ」
「私が泣いていても関係ないでしょ」
視線を思いっきり逸らすよりもさきに顔だけ自分の方に向けられる。
発言からして嫌な人って思っていたけど 綺麗な淡紫色の目や整った顔
ギャップの違いと整った顔に逸らす事を忘れて見とれていると
「いぢめたくなるから」
本当にキスできそうな至近距離から笑いを浮かべられた。
この不思議な館に来た事も そしてこれが私の運命を変えることになる事もこの時はまだ何も分らなかった。
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「どうしたの?要ちゃん」
くすくす吹きだしてしまった私に不思議そうな顔をされて我に返った。
そうだったここは関係者だけの打ち上げだったことを忘れて思い出に浸っていたから
心配した顔で覗き込まれたから慌てて
「ライブだったから」
「疲れたの?」
「ううん。思いっきり歌えたから」
「ちょっと声あげるのつらかったでしょ?」
「ばれていましたか・・・でも即興で曲のアレンジしてくれて助かりました」
おつかれさまと言ってぽんと頭をなでてくれた。
「ここが終ったらもう一軒行くけど。初めてのライブだったから今日は早めに帰ってもいいよ」
数年前はずっとブラウン管越し、CDを聞いていた人が目の前にいる。
大ファンから今では一緒にユニットを組んで 隣でキーボードをひいているパートナーに。
「じゃ厚意に甘えてここが終ったら帰ります」
ほろ酔い気分でスタッフのみんなに御礼をいい別れて 空いた時間をどうしようと考える。
明日からまた楽曲作りをしたり ジャケット写真の構図を聞きに言ったりするから
・・・・今日なら大丈夫・・・。
家路に向かう足を止めて 両耳のピアスに触れてそして走った。
不思議な館『蝋人形の館』と呼ばれる場所に来て数日掃除をはじめ食事当番、洗濯と雑用を青蓮と一緒にしている。
今日は青蓮が食事当番でテーブルに並ぶはじめて見る青蓮の料理を見て
「おいしそう・・」
カリカリのクルトン入りスープとフランスパン、サラダ、ミートローフ。いただきますをして一同思ったことを琥珀が言った。
「激まずい」
歯に衣着せない台詞にがっくりとうなだれる青蓮をなだめている赤光。
中華料理がメインの琥珀の料理と胃に優しくてバランスが取れている赤光の料理
赤光だけ「兄ちゃん」って言っていたから青蓮は赤光の料理を真似したようだけど・・この味は。
「青蓮・・ちょっと貸して」
3人分のスープをお鍋に入れて味を整えて再び食卓に並べた。
「まぁまぁだな」
小さな声で琥珀が言ってきた。琥珀のまぁまぁは満足だって意味で
「煮なおしている合間にちょっとカナッペ作ってみたよ。食べて食べて♪」
煮なおしたスープとカナッペをぺろりと平らげじっと私を見て
「なぁどうやったらそんなに美味い物が作れるの?」
「青蓮基本的には料理を間違えていないけど ちょっとアレンジしすぎるんだよ」
「そうか?」
青蓮と要が料理話で盛り上がっている間に
「先輩って好きな子をいぢめちゃうタイプですね」
「なんだそれ?」
二人を眺めるのをやめて赤光の方に顔を向けた。
「あまりお客様に執着しない先輩がどうしてこの子にはこだわっているんですか?」
案内人として何人もの人の末路を見届けているうちに出した結論はどうせ人間なんて弱い生き物で傷つき、足掻き、悩んで最終的には死、消滅を選ぶだけの儚い生き物
そんな他人をどう思っても所詮どうにもならない。なるようにしかならない自分の中にその人を入れてしまったら重たいから。
辛いからある程度距離をとりながら接してきた。俺の手でその人の温もりを感じながらその人を消していくそれの繰り返し 昨日も今日も明日も、
何も変わらない 変えさせない俺のスタイルだから何も変化はいらない。
そう思っていたけど
「噛み付きそうな目をむけられたから」
「要ちゃんが?」
「まぁな。瀕死状態で助けた時に寄ったら殺す勢いがあったから珍しいなと思って」
タダノキマグレだ。
そのらしくない冷めた目で物事と自分を見つづけている部分や割り切っている言動涙を流す年頃の少女の部分が入り混じっている人間。いや
「可愛いならもっと優しい所見せたらどうですか?」
理性と本能が天秤にかけられた不安定な魂を持つ浅倉要に
「泣いているだけで何もしない人間に興味はない」
鼻で笑いポケットからタバコを取り出し一服すう。
「先輩相変わらずキツイですね」
苦笑しながら灰皿を脇に置く赤光に
「言っただろここは俺がルールだって。案内人である限りな」
干渉に近い事を俺はあいつにしている。どうしてこんなにほっとけないのかタダノキマグレだけじゃ収まらない思いと興味を持っている存在に
「俺は案内人であいつはお客様・・ただそれだけだ」
上手く切れる言葉が浮かばずに自分を戒めるようにその言葉だけをいい席を立った。
料理のコツを教えているうちに
「ね、要の荷物にバイオリンがあったけどやっているのか?」
「・・うん。そうだけど・・」
イヤダ。体の中がどくんとうごく。
「今度聞かせてよ」
青蓮の綺麗な目が私に注がれる。それがさらに拍車をかける。
「ちょっと調子が悪いから、、」
言葉を濁して視線から逃げるように足早に去った。
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「どうしてこの日も魔族がいるんだろうね」
ある場所に向かっている途中道で魔族の音が聞こえてきたから退治をする。
毎日持ち歩いているバイオリンを取り出して曲をひきその曲の英雄を出して攻撃をする『魔曲』も私の能力の一つ。
消滅した魔族を見届けつつチューニングをして手早くバイオリンをしまい
所々血がついているケースを見ながら ずっと『魔曲』を作り出すための機械でしかないと思っていたけど
・・ケースをたたみまた進む。
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もう何度もこの体は血に染まった。
私の体から流れる血と魔族の返り血に。
何度も何度も耳に聞こえる悲鳴と憎悪と欲望の音が雑音のように感じる。
うるさい・・・何もかも消えてしまえ・・・。
耳に残って消えない音が消える瞬間は戦っている時だけだから。
英才教育を施された幼少時代 いや今でもだけど私は世間では有名らしく曲を弾いたら賛美をたくさん言われる。初めは喜んでいたけどその心の音を聞くと吐き気がしてくる。
音楽、音楽、求めているのは私じゃなくて天才音楽少女の肩書きだったから。
音楽を失ったら私はただの小さな女の子で それ以上もそれ以下でもない扱いに嫌悪しながらも今の位置から逃げられない自分はもっときらい。
中途半端に悩んでいたから優しい手を差し伸べてくれたあの人を救えなかった。
「・・・・表面的についた血は流れても罪は消えない・・・」
自嘲しながら勢いのあるシャワーで体を洗い流して浴槽に浸かる。
青蓮の視線から逃げて 部屋にいても気がめいるからお風呂に入って気分転換をしてみた。
必要以上に白い泡に身を包んで洗い流して自分の体は・・薄ら薄ら傷跡が残っているのをみてよけいに虚しさが増してくる。
あの人の敵と称して私は音楽を捨てた。
綺麗に整えられたステージもライトも捨てて死ぬか生きるかその時の気持ち一つで大きく変わる戦いの世界に身を投げた。
狂ったように 貪るように魔族を叩きつけて、引き裂いて、壊して。
流した血に嫌悪しながらも力が湧いてくる 止まらない モットもっと殺し足りない狂ったように戦いを求めている自分が止められない。
半分ある魔族の血がさわいて止められない・・・迫る魔族に対する嫌悪と同時に自分の狂った精神、歯止めの利かない人形のように見える。
「誰か私を止めて」
死と言う形でいい。どうか・・・この手を 息を止めてください。
髪に、顔に、喉に、足にまで絡みつく生暖かい血を忘れるまで戦いつづける私を
「オイどうしてここにいるんだ?」
「え?な、、なんでって私が聞きたいよ」
体を見られないように手を広げて隠しながら少し離れる。
「言っとくけどここには男湯、女湯とかないぞ」
ニヤリと笑う琥珀に対抗する手段を考えていると
「まぁ一杯飲んどけ」
明らかにお酒のおちょこを渡されて
「未成年はお酒飲んじゃいけないんだよ」
「拒否権はないって事教えてやろうか」
ま。。また何かされてしまう急いでおちょこを持ち上げて飲み干した。
「おいぢぐない・・・・」
長時間お湯に浸かっていてゆだりきってる体も冷ましたい急いで湯船から出ようと一歩踏み出したとたん
世界が歪んできた。
「んにゃ・・」
まだゆらゆらおぼつかない視界に上手く声が出せない。
「一気に飲む奴がいるかよ」
「・・・琥珀がいけないんだから」
頭がまだぼーっとしているのも今更だけど一気にお酒を飲んでしまったせいか頭がふらふらする。
「アル中だぞ下手したら」
骨ばっている手が額に触れる。
「琥珀のバカ」
「なんだと介抱してやったのは俺だぞ」
「このままほっておいてくれてもよか・・・・・・・」
「何だ?もういっぺん言ってみろよ」
夢か現か今は判別できないけど心配するみたいに目を細めている琥珀の顔を見て何も言えなくなった。
ほっておいてよかったのに 言おうとしてもそんな目で見られたら言えない。
「・・やっぱり琥珀がいけないんだ・・・」
気まぐれに触れて、いぢわるして、どこか距離をとっているのに 突発的にそんな目で何か言われるなんて
「着替えなかったからそれでもいいだろ」
身に付けている服がぶかぶかでよく見ると大きなシャツを羽織っているだけでって事は・・着替えも
「いい女しかそんな気起きないからな」
こ・・この憎まれ口にかっちんときた。
「何よ。もうちょっと大きくなったら私だって」
はっと我に返って口を閉ざした。
大きくなるはずがない。今は使命を遂行するためにこの肉体と命をもらっている身の上・・・使命がなくなれば私は
どんなに音楽で名前を残しても 血を流しても 失敗してしまえばただのお払い箱足元が崩れそうで必死で欲しい言葉を求めて 場所が欲しくてがむしゃらに動いて。
だんだん音が、人が嫌いに鳴ってくる。
一人きりの冷たいベット、決まった時間のレッスン、指が壊れるまでの練習もういやだと思いながらも自分を奮い立たせて音楽も戦いもこなしてきた。
消えてしまう 今の私の心のように今度は存在までも、抵抗も何もできないまま 潔く使命が終るのを待っているだけで
昨日も、今日も、明日も分らないまま 確実に言えることはシメイガオワレバワタシハキエル
「なんでもない」
琥珀を払いのけて急いで扉を閉めた。
分っている・・・分っている私が長く生きれるわけはないってこともなのにどうして今更このことを気にしているんだろう?
ムキになってどうして琥珀に反発しようとしていたのかわからない ワカラナイ 私がどうしたいのか・・。
復讐 神からの使命を遂行する事 シメイガオワレバこの体も存在も消えるただそれだけでしかない 何も変わらないただそれだけで・・・・。
「要ちゃんちょっといいですか?」
感傷を振り切って笑顔を装う
「なに?」
心配させたくない。そして私の事も知られたくない
「青蓮にバイオリンひいてもらえませんか」
「私の・・・」
「はい。要のバイオリン聞くまでは部屋から出ないって言っちゃて」
どんなにすばらしい演奏を聞いても感動しなくなった私の耳世間から評判が高まるにつれてどんどん技術的には向上していくけど
肝心な音を楽しむ感覚を無くしてしまった。そんな私が何を表現できる?
自分の音を見失った演奏を聞かせたくないから 心地いい音を発しているここの人たちに薄っぺらさやメッキがぼろぼろはがれそうで怖かった。
「いいよ。久しぶりだから上手くひけないけど」
「ありがとうございます」
「その代わりどうして青蓮はここにいるの?私と同じお客様で滞在している風には見えないけど」
困った笑いを浮かべて
「青蓮は両親を目の前で殺されました」
「両親を・・・」
声を振り絞って私に告げる赤光の顔を瞬きせずに見つづけて、赤光から発する悲しい音と時折聞こえてきた青蓮からの歪んだ音。
「本当は甘えたい年なのに。僕は母親・・いえ女性の代わりになれませんから」
音は違うけどどこか共通している感じがしてきっと何か深い事があるんだろうと思っていたけど
「そうだよね。赤光は美人だから頑張ればなれるかなーって」
「要ちゃん」
くすくす笑い赤光の肩を叩いて
「きっと二人が報われる日が来るから。だから今は笑ったり怒ったりいろんな感情をぶつけて一緒にいる時間を大切にしていこうよ。ね?」
ヘンだな・・どうしてこんな言葉が出るんだろう?今までそんな事言っていないのに不思議と出てくる。
「貴女は本当にいい子ですね。今青蓮をつれてきます」
ぽんと私の頭をなでてありがとうと笑ってくれた。
音楽を捨てて戦いに身を投じて一ヶ月。一分一秒油断をすれば負けてしまうからすぐに『魔曲』が出るようにたくさん曲を弾いた。
すぐに曲の英雄が出るようになるまで乱暴に指を立てて刺板に叩きつけていくチューニング所か弦もメンテナンスしていない。
赤光が持ってきた私のバイオリンケースを受け取るけどずっしりと重たく感じてくる。
バイオリンが石のように重たい。ぼろぼろのバイオリンかと思ったら綺麗に弦が張られてあって傷どころか新品同様の綺麗な楽器が納まっていた。
「これは・・?」
「ああ。先輩が直していましたよ」
「琥珀が・・こんなにひどい扱いした楽器を?」
うなだれかける顔を上に向けられ
「いいえ。楽器以上に酷い怪我をしていてもちゃんと左手かばっていたでしょ」
そういえば無意識に左手だけはって庇っていた。
「だからよっぽどその楽器に思い入れがあるんだろうなって。青蓮や僕だけじゃないですよ。先輩も要ちゃんのバイオリンが聞きたいんですよ」
そっと私の左手を包んで手に触れるか触れないかの軽いキスをしてくれた。
キッチンの前に飾られた小さな台の上がステージ、お客様は青蓮と赤光が椅子に座って軽い拍手をする。それにあわせて軽く頭を下げる。
バイオリンが石のように重たい。冷たいこわばった状態の楽器に軽く音を出しチューニングをする。
一日でもひかないと音が変わる。楽器は生き物じゃないようで生き物だから一緒に響き合おうよ モットモット飛ぼうよ もう逃げないから。
強いで出しの音から始まりからここがどこかも忘れるくらい熱中していた。
作曲者と作曲した年の背景は戦争時 地上は血と血が溢れ 人が人を傷つけていく何を信じていいのか 善悪もわからない場所でただひたすら平和の訪れを願った曲。
思いを一羽の鳥に例えて にごった地上を灰色の空に代えてその空を切り開くように力強く飛び立っていく飛びきれず落下しても 願いと思いは忘れないで作曲者の思い。
そして私の思いもその曲に同調する。
音が変わっていく曲を愛しいと思っていくほど私の音がみずみずしい音になっていく。
本当だ自分が好きにならなきゃ君も変わらない・・やっぱり私音楽が好きなんだ。
曲が終わりハイテンションのまま二人の方をみると
「な・・どうしたの?」
「すっげーよかった。オレ音楽分らないけど要のバイオリン大好きだよ」
一向に緩まない腕の中に包まれて
「僕も曲のイメージだけじゃなくて要ちゃんの思いが感じましたよ」
・・・素直な言葉それ以上の感想はもっと言われてきたのに涙が溢れて止まらない。
「大丈夫か?オレ締めすぎたか?」
「ううん・・。嬉しいから泣いているの」
ただ魔族を倒すための能力でしかない音楽なのに こんな風に人に喜んでもらえる事が音楽をしてきてよかったってこんなにも思える日が繰るなんて思わなかった。
音を作り出せる能力があってよかったって。
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「ねぇ。今日のライブどうだった?」
「最初から聞けなかったけど新曲よかったよ」
携帯電話越しから聞こえるかつての魔族退治をしてきた仲間
「ふふ。ありがとう。今から時間ない?」
少しの沈黙 どこに行くかは分っているから
「・・ごめん。大学の方が忙しいから」
「ううん謝らなくていいよ。私一人で行くから」
電話を切って空を見上げると雪が降ってきた。
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ふぅー。大きなため息をついて部屋に飾ってある鏡の前に立った。
満足して嬉しくて引き続けたバイオリンと私。だけどどこか影が見える。今ここに立っているのは人間で 浅倉要で
「・・・だけど私は人間じゃない・・・」
転生前の堕天使の自分と能力が今もまだ一つしかない体を責め立てているようで自分が誰で 何者でわからない。
「私は誰・・・・」
何度唱えても答えは
「お前はお前だ」
声の方向を見ると琥珀が立っていた。
「琥・・・・珀」
答えなんて誰も持っていない ない筈だって思っていたけどこの人は平気で答える。
「お前がなんだろうが要は一つの命だろ?」
「違う!」
肯定も否定もできずにただ否定するしかない。
「さっきみたいに笑ったり、俺に弄られて怒ったりしている。それでいいんじゃないか」
問い掛けられる言葉も向けられる目も耳を塞ぎ 目を閉じるどんな魔族よりも今ここに立っている琥珀が怖い。
「違う!違う!!琥珀なんかに私の事わからないよ」
今ここにいるのも 過去もこれから先なんてどこにもない私の事なんて・・・。
この体ももう傷口とともにたくさんの血を浴びて 音楽をひくこの手もどこも血にまみれている。キレイナンカジャナイ 私。
すべてを知ってしまったらきっと琥珀も興味を無くすだろう。そう思うと悲しくて だけどほっとして
「言ってみろよ。お前も俺の事知らないのに頭ごなしに反発するなんていい度胸しているな」
「あ・・・」
殺気を帯びた目で琥珀をにらみつける私の視線を受けながらどんどん私の心に侵入してくる。
いやだ・・・・いやだ これ以上誰も入れないって決めたのに。
また逃げ出したくなる でも逃げられない琥珀の視界から金縛りにあったみたいに体が動かない。
「何しているんですか?」
赤光と青蓮が何事かと部屋に入ってきてしまった。それと同時に
「どうした?」
「魔族が来ている」
三人のそばを離れて耳を塞ぐ。
圧迫する憎悪の音と魔族特有の悪意が
「これが私の正体だよ。堕天使の・・・」
真っ黒い髪が金色の髪に 背中に羽 体も命を落とした19歳の体と当時使っていた大鎌
人間時には大きするけど体になったら手に吸い付くように上手くコントロールできなかった鎌がうごかせる。
この人たちをこれ以上巻き添えにできない。
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「要君」
「あ、月城来てくれたんだ」
目的地に着いて一息つく魔族退治時代の情報兼精神面のお師匠さんでもあり、
「君のお誘いだからね。寒くないかい?」
身に付けていたマフラーを巻きつけてそっと顔に触れる。
つまりまぁ・・・・情報をくれる換わりに関係を持っている 恋人契約をしている月城悟。
「魔族退治からずっと仕事で来れなかったから一人で来るのは辛かったんだ」
ここは私の身代わりになって命を落とした朔のお墓。
1998亡くなった日が刻まれた数字 添えた花束を置いて二人手を合わせる。
「ここで弾くのかい?」
ケースからバイオリンを取り出して
「うん。今たくさん弾きたいから」
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「まさかこんな所まで追ってくるとは思わなかった」
魔族と私以外に人が入れないように結界を張る。これで3人も、館も傷つけないで済む。
「今度こそその命をもらう」
「やってみるならやってみなさいよ」
羽を広げて力では叶わない分スピードで勝負していく。
「ここよ・・」
懐に回りこんで釜を古い傷口を負わせる。
「一つ言い忘れていたけど分身に狼を飼っているんだ」
鋭いくちばしが右手にあたる。
「それだけ?」
右手に食らいついている狼を払い落として間合いを取る。
「純血な大天使と魔族から生まれ、殺戮を繰り返して自ら堕天の門をくぐり魔族になったんだろ?」
淋しさと生きるために戦いつづけた 襲い掛かってくる魔族を切りつけて
「天界から追放されて 魔界もその体から染み付いた聖気も迫害されて 人間界もその力があるからどこに言っても居場所がないんだろ?なぁ・・・」
「黙れ黙れ黙れ!」
痛み出す右腕の痛みを振り切り
「天界も魔界も人間界も・・・信じられるのは私し・・」
居場所を求めてもどこにもないといい切るつもりだったけど そばに付き添ってくれる朔やヤナギの顔そしてこの館の人の顔が浮かんできた。
迷っている事で一杯で大きな手が私の体めがけてやってくるのに気がつかなかった。
「甘かった・・」
自嘲して瞬時で結界を張ろうとしたけど時間がない。
「ぎゃぁあああああ」
魔族の手が燃えて苦しんでいる姿が見えた。そして
「どうして赤光がここに?」
「私はともかく先輩と青蓮は能力者なんですよ」
にっこりわらい傷ついた手に布を巻いてくれる。
「ここはオレと琥珀が引き受けるから」
二人で合図して結界から外に出て
「僕は貴女が飛べない翼で雪の中を飛ぼうとしている鳥に見えます」
鳥?
「身は傷ついてもそれでも高く飛ぼうとしている一羽の鳥のように」
反論もできないまま言葉が浮かんでこない。
例え私が命を落としても誰も何も変わらない 何も生み出せない命ならこの体私だけで終らせる この呪縛も何もかも終らせる・・・・
そのために そう思ってきたのにここに来て変化が会って 死にたくないって生きて償っていきたい。
使命が終っても生きていけたらいいと望みを持ってしまった。
もう何も望まないと誓ったのに。すべてを捨ててもいいって決めたのに
「青蓮・・」
赤光の声に気がついて戦闘場所を見ると狼におされ気味の姿が見えた。
琥珀も本体にてこずっていて加勢にいけない状態。
「私が行く」
「怪我しているのに」
「ちゃんと帰ってくるから。だから離して」
ゆっくりと私の手を離している赤光に背を向けて再び戦場に戻っていく。
死に場所を求めて 使命を果たすために彷徨いながら悪戯に戦ってきたけど今は違う。
「バカ!どうしてくるんだよ」
「これ以上目の前で大事な人が傷ついているの黙ってみていたくないから」
音をイメージしてイメージから本体にダメージを与えていくけどまだ足りない。
「自分だけじゃなくて誰かの為に戦いたいから」
「要・・・」
自分の体にスピード負荷をつけて打撃を与えられたら倒せるけど目の前の狼が邪魔で
「くっ!」
「青蓮・・もういいから力を放出させないで」
莫大な力が青蓮自身を飲み込もうとしている。徐々に意志も関係なしに力だけが暴走しそうで青蓮に気をとられてガードするのも忘れていた。
.......................................................................................................................................................
「二人は忙しいからこれないみたいだね」
「ええ。紅茶ありがとう暖まったよ」
バイオリンをケースの中に入れて缶ジュースの紅茶を一気に飲み干した。
「これから僕の家に来るかい?」
首を横に振って
「明日も仕事だからやめておくよ」
「そんな淋しそうな顔で言われても説得力ないけどね」
「不謹慎だよね。こんなに充実しているのに淋しいって思うなんて」
「墓前で誘う僕も僕だけどね」
くすっと銀縁眼鏡がひかりからかい口調で答える。
「また今度ね」
月城と別れて今度こそ自室へ戻る。
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「こ・・琥珀・・・」
目の前に広がる血液と見知った人が力なくその場に倒れこんでいる。
「戦いは・・男の役目だ・・・」
荒い息とうっすらと流れる吐血からそれ以上何を言っているのか聞き取れなかった。
「てめぇ。よくも琥珀を」
怒りで我を忘れかけそうな青蓮を押しのけて
かけていた結界もといてありったけの力を集めて音のイメージと同時に鎌を叩きつけた。
砂のように消えていく肉体を見とどけて
「すげぇ・・・」
「感心している場合じゃないですよ。早く薬を・・っ」
薬箱を手にしている赤光の足が止まった。
「もう僕にも、、手が負えない」
「助からないのか・・・琥珀は・・」
無理に動かない体を動かそうと乱暴に動かす青蓮を止める赤光
「・・・・要ちゃん?」
どこまで続けられるか分らない。意識が途切れないように体に刻みを入れて手から琥珀の傷口に傷を治す治癒の光を出す。
これが大天使の能力 回復治癒能力だけど不完全だから使った分だけ私の体にも流血した分の血が一気に抜けていく感じがする。
「ごめんなさい。私のせいで危険な目にあわせて」
一通り傷口を塞いで動かせる状態になった琥珀を運び終えた二人に頭を下げた。
「何で謝っているの?要がいなかったらぞっとするよ。また暴走するんじゃないかって」
ぐっと自分の手を握りながら少し出ている水をにらんでいる
「でも私は・・人を」
「要ちゃんは私達の為に戦ってくれた。そして先輩も助けてくれた。感謝しきれないほど」
そっと左手に触れて
「美味しい食事を作ってくれたり、バイオリン弾いてくれたりして」
ちょっと着眼点違うと思うんだけど 青蓮(汗)
くいっと羽を引っ張られて
「何しても飛べる・はばたてる羽だろ」
純白の翼も血の色に染まっている この手も。そんな体を包んでくれる人がここにいた。
「貴女に生きていて欲しいんです。これからも」
だからもっと自分を大事にして
生きて どこまで生きられるか分らない
分らないならその分変えられる事もある。
生きていたからここに来れた事も運命とか決められた事とか思いたくない。
「起きていたの?」
二人が寝静まった後も一人でこれからの事も含めて考えて事をしていた。
力を一気に解放したから人間時の姿じゃない前世のままの姿をみても普通に話をしてくれる。
「まぁな。傷治してくれたって聞いたから」
眠れずに即興で作った曲を小さな音で弾いていた所に琥珀が入ってきた。
「傷の方痛くない?」
「いや。言えるようになったか?」
「うん。私もとの世界に戻るよ」
ピクッと眉が動いた
「ここは居心地がいいから。このままいるとずるずると甘えてしまうから」
どうしてこんなに胸が痛い?きゅっと胸をつかまれる感覚 さよならをいうのが辛い。
「生きて償いた・・」
決心もついたのにどうしてこんなに涙が出てくる?
帰りたくない 戻りたくない・・・だけど戻っていかないと使命は終らないから。
まず初めに使命を終らせていけば堕天使の自分も消える。そうすれば・・
「早く大人になりたいよ・・。そうすればこんなに泣かなくていいのに」
体が密着して動けないほど強く抱きしめられて
「大人でも一人で平気なんかじゃない。だから誰かと抱き合うんだろ?」
案内人で今まで見たぐれぐれ振りとかも すべて案内人琥珀で今初めて人間っぽい琥珀に触れた瞬間かもしれない。
「私の知らない場所や人の中で変われると思ったのに どうしてこんなに居心地よさを知ってしまった」
どうしてこんなにかき乱す?
どうしてそんな目で私を見る?
「ハナセ。怯えろ。私は魔族なんだよ下手したら琥珀も傷つけてしまうんだよ」
無言で私の手を引っ張って自分の傷口に当てさせ
「もう消えてしまっているけどここにお前を守ったしるしが残っている。何も残せないっていっていたけど既に青蓮にも 赤光にもこの数日生活していて残してきたじゃないか」
表情が増えて笑っている青蓮それを見て穏やかな音をたくさん出せるようになった赤光、そして目の前にいるこの人の音は
「俺がお前のすべてを変えてやるよ。何もかも」
淡い紫の瞳と強い視線がぶつかる。対象は紛れもない自分
「こいよ」
何かが終って始るそんな気がした。
この目が怖かった。今までのものをすべて埋め尽くすほどの強さでずかずかと侵入してくる 侵される感覚に差し出された手に迷いも切れて手を取ってしまった。
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もう今までの自分に戻れない そんな気がするから怖かったけど今は
玄関のドアを一人で開けて薄暗い部屋には誰もいない。
生活観がない部屋だって月城に言われる必要最小限の電化製品と本とCDと楽器が並んである部屋
朔がいた時には色とりどりの花やインテリアが並んでいたけどそのままそれをもってくるには一人部屋の冷たさに合わなくて、思い出してしまうから処分した。
花も何時もどってくるか分らないのに育てても枯れてしまうから植えるのをやめた。
思い出に浸りながらも 今の生活を続けられるほど私は強くないから。
ぱっと電気をつけるより先に鮮やかな火がみえた。
「誰?」
「ご主人様の事わすれたのか?」
火と共に姿を見せた琥珀の姿に
「本物?」
どちらともなく互いの体に触れる
「俺以外のなにものでもねぇよ。試してみるか」
「え?」
「能力使って壁をぶっ壊すとか」
「やめてやめて」
・・・・・こんな恐ろしい事をさらりといえるのは琥珀ぐらいしかいない。
「その顔やめたほうがいいって言っただろ」
あまりに唐突でどうしていいのか呆然と立ち尽くしている私に
「自分の顔なんてわからないよ」
「男心そそるから」
それって・・・前に月城にも同じ事言われたけどあっさりと私の抵抗も潜り抜けて気がつけば肩越し。
「・・・・この7年間色々な事があったよ」
後ろにいる琥珀に体を預けて心音が聞こえてくる。ぽつりぽつりと
「前以上に私は戦った 仲間ができた そして大切な人が身代わりになって死んでいった」
「血に染まっていない羽、この目も、足も、呪文がいえないように喉笛を刺された部分も、手も足も全感覚失った時もあったけど何とかこうしてここにいられる。朔がいたから・・・」
月明かりに照らされた部屋 寒々しい殺風景なインテリア そして自分
「私が朔を殺したから 私は幸せになんてなっちゃいけないの。償えって もっともっと戦って・・何がおかしいの?」
「7年間何があったのかあくまで検討しかできないけど どうしてそこまで気にするんだ?」
「どうしてそんなに笑っている?・・・お願いだからこれ以上私をかき乱さないで!!」
その目も 声も 軽々と抱える手も 細胞一つ一つが覚えている存在。耳につけているピアスがうずいてたまらない 初めてつけてもらったあの痛みがオーバーラップしてしまう。
「生半可な気持ちで俺はお前にそのピアスをあげたんじゃない」
「あ・・・」
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「痛むか?」
「いや、時間経ったから痛くないよ」
ずっと使っていた部屋が琥珀の部屋で今日まで気がつかなかったけど
「何だ?」
穴をあけるだけじゃなくてアフターケアもできるように薬品まで揃っていたりバイオリンの弦を直す機材が合ったり 不思議な空間
「もう迷う事ないよ。このピアスを付けた時の痛みをこれからずっと思い出す」
本当は抵抗があった 人もだけど魔族を倒す事が例え魔族でも命を奪う事には変わりないから.
それにどんなに足掻いても 忌み嫌っても私の体の中には同じ血が流れている事は誰にも覆せない事実。お父さんと同じ仲間を殺す事に躊躇っていた。
「これから使命を遂行するだけじゃなくて 自分の意志で戦う事を」
ピアスホールから流れた血を指ですくい
「この体を知り受け入れて、迷いも消してくれた琥珀に・・この血に誓って」
もう迷わない。
自分が天使でも悪魔でも人間でもない存在であっても生き続けて戦う事を誓った。
例え命を無くしても守りたい物があるから琥珀は無動作に流れる私の血をすくい舐めて
「ああ・・」
現世の世界に通じる扉の前で3人に見送られ
「そろそろ行くよ」
「ええ・・って要ちゃんバイオリン忘れているよ」
渡された荷物だけ受け取ってバイオリンはそのまま赤光に渡したまま
「いいの。私にはヤナギの分までこれで弾いて行くから」
赤光に渡したのは私が今まで使っていたもので これからはヤナギが使っていた愛器を使うことに決めた。
最後にヤナギが言い残した事 自分の分まで弾いて欲しい
だけど守りきれなかったことが辛くて中々弾けなかった 前は
「今度上達した演奏を聞かせてね」
「分りました。頑張って練習しますね」
託したバイオリンをそっとなでて それに自分もつられるように新しいバイオリンに触れる。
赤光の手はバイオリンを引き込んでいる手なのにここに来たと同時に恋人以外のこと現世の名前すら忘れてしまったと後で教えてもらった。
それほど辛い事があったのかもしれない。大切な人を失う事が・・でもね赤光ずっと忘れたままで過ごせない事だってあるんだよ。
いつかきっとどんな形であれ記憶が戻るから その日がきても辛くないように少しでも思い出せるように、楽器を置いていくんだよ。
今度こそ愛器と呼べるように頑張るから。赤光も頑張ってね そう願いも込めて。
「要」
「何?青蓮」
「ほんとーに来てよ」
「分っているよ。その時には丸まるのりんごじゃないアップルティをのませてね」
「うっ・・」
誤魔化し笑いをする青蓮に笑いかけていると、きらりと光るものが飛んできた
「やるよ」
手の中に収まっている物はピアス
「え?でもこれ高そう・・」
「餞別だ。いいから受け取れ」
きらきら手のひらの中で光る水晶?赤と青の色に変化する不思議なピアス
今日開けてもらったばかりの耳たぶからファーストピアスをはずしてもらったピアスをはめる。
「にあう?」
内緒話を聞くような体制で耳たぶを琥珀の近くにもっていきながら聞き そして
「悪くな・・てめぇ何を!」
「今までの御礼とキスの仕返しだよ」
にやりと笑ってぼーぜんと自分を見ている琥珀に
「そうだ。髪留めあの戦いで使い物にならなくなったんだよね。代わりにこれあげるよ」
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7年前よりも身長が伸びていったぶん私の両腕は何とか琥珀の首まで達する事ができた。
「おかえりご主人様」
もしかしたらもうあれから7年会ってもいない私の事忘れてしまったのかなって不安があった。
変わってしまった自分をまたあの時と同じように接してくれるのか怖くて 意地を張ってしたけどその意地も自尊心さえも冷えた体を温めるように強く抱きしめられる。
マルボロのタバコの香りがする触れる唇、身動きできないくらい抱きしめられる瞬間から堕天使で会った前世の事も罪も消えていく忘れていく。忘れられる。
この腕の中では『浅倉要』としていられる この人がいるから
「あ・・あの・・なにを?」
「決まっている。今から7年分抱いてやるよ」
7年分・・・・
「無理!絶対無理だって。体力持たないよ」
「人間一食ぐらい抜いても死にはしない」
誰よりも我儘で、鬼畜で、目つき悪くて、口も開けば憎まれ口で、ろくでもない案内人だけど触れられると抵抗ができなくなる 息が止まりそうなほどどきどきしてしまう。
悔しいけど私はこの人には逆らえない。
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館から現実世界へ戻った時横になっていた病院ベットにつきっきりでいてくれた朔
その時に自分は今まで一人で戦っていると思い込んでいた 誰も頼れないって今まで片意地張っていた事に気が付いた。目が覚めた自分に涙を浮かべて喜んでくれた
こんなに思ってくれる人がいるのに勝手に寿命縮める事しか考えていなくて
周りの事に目を向けていなかった。館でもらったものや気持ちの変化 そして
「私は大丈夫だよ」
これから伝えるありがとうと気がつかなくてごめんなさいを
「い・・今要さまの口から『私』って」
今は少しずつだけど変わっていこう 変えていこう
自分を忌み嫌っている部分も愛せるように それ以上に回りの人に私の気持ちが言えるように,そして大切にできるように。
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「まだそのりぼん使っていてくれたんだ」
肩まで長さがある艶のある髪に当時使っていた赤いりぼんがよく似合っているけど だけど・・・
「・・・かわいい・・・(笑い)」
「てめぇ」
しまった・・・。本気に怒らせてしまった
「可愛いなんて言わせない」
7年目にして再びドレイとしての私のどとーな生活が始る。
けだるいだるさと痛みを感じながら部屋の外を見るとさっきまで降っていた雪が積もっていた。
「もうそろそろクリスマスか」
2日早くプレゼントには部屋の家主(私)以上にくつろいでいる人小さな変化が今の自分を作っていった。
くり返される終わりと新しい始まりと一緒に新たな問題もあるけど今はただ生きて 生きていきながら忘れて琥珀と言う名前の空に流されていこうと思った。