報われない思い〜例え私がいなくなっても BGM 「geteIーgete odyssey」

 誰にだって人には知られたくない事の1つや2つはある。
それが家族、恋人、友人、、と様様だけど私の思いも奥底にある物もそして第二の自分の声がいつも聞こえている異常な体の事は誰にも知られたくない、、。

 たくさんの言葉よりもたった一人の言葉は欲しかった。
自分を必要とし、そして自分も必要だと思える人に出会いたい。そんな人がいたら、、と思いながら私は人に心を開けないまま 毎日毎日が駆け引きの繰り返しで戦いと言える。

一人は嫌だから、、笑顔という武器を手に入れて人に心に入り込み弱さという武器を使いさらに心の中へ自分をねじ込ませ 本当の自分とは全然違う自分を演じている。
一度侵入してしまった仮の自分を捨てられないまま
「これが本当の自分?」第二の自分が頭の中で言ってくる。
「どうして無理して自分を作っている?」演じるたびにその声が聞こえて離れない。
悪循環と耳に痛い声をかき消そうと 声が聞こえなかった時以上に明るく振舞っていてもますます心は磨り減るばかり。

 本心を言ったら迷惑をかけてしまう。だから欲しいもの、やってみたい事を人に頼まずに押し殺す。
我慢している事が知られたら どうして言わないんだと注意されるけど 頼んだら頼んだで迷惑かけてしまう事ぐらいすぐに分るから。
 自分以外の誰かのために ひたすら我慢して、優しい言葉をかけてみても煮えきれない気持ちは消える事は無く、罪悪感という矢が心を貫いていくだけだった。
思いは踏みいじられ、散っていく光景を過去と周りで見ているから、誰かを好きでいてもその思いの分だけは返してくれない。
大好きな人に「好き」といわれて 「大嫌い」と言われたら世界中の人から自分の存在を消されてみたいな気分になって とても怖い。
誰かを愛する事に怯えて 傷つくのが怖いから誰も見ないのに対して 「誰かを愛せ」と叫ぶ第2の自分
誰もいない部屋で2つの板ばさみにしている答えを出せないまま苦しみ、恐怖に打ち震える滑稽な姿が本当の私。だからこんな姿を見たらみんな離れてしまう だから今日も仮面をかぶっている。

頼まれる事を笑顔で「いいよ」と言って引き受けるけど 頼まれ事を一杯一杯で消化して 簡単にできたよと言っている。先生や周りからは「いい子」の烙印を押されてますます身動きが取れない。
もっとわがまま言いたい。無茶な事をしたいと欲求は募り重なる度に
「そうだよモット自分のやりたい事をやればいいよ。今まで押さえていたんだから」第二の人格が導く。
でも、それができない。違う世界にはいる事が 今までの自分をゼロにしていく事は怖いから。殻を破れない私。進もうとしてもどこにも進めない 行けない自分
 行きたい所が分らない ひたすら今を取り繕って誤魔化して 進んでいるように自分に暗示をかけている。
息もできずに呼吸を忘れ かたくらに閉じた孤独の自分を嘘の希望で黙らせているのを 第二の自分は笑う。

毎日毎日が第二人格の声と周りの声 そして自分を忌み嫌う思いが安心を奪っていく。
 今ではすっかり慣れてしまった自傷行為 死のうと思って体を傷つけるけどいざとなると体が拒否をする。煮えきれない、、たまらない、、つかめない、、誰か助けて、、声にしない声が頭の中を彷徨う。

 第二の声が無くなったと同時に意識は飛ばされ何も無い真っ白な空間が目に入った。夢も希望、、否自分さえない今の私にぴったりな空間だと自嘲していると
 瞬時に目の前に現れた男の人が「いらっしゃいませ」と言ってきた。
突然の出来事にビックリして声が出せない間に
「蝋人形の館の案内人赤光と申します。」
 一見優男っぽいけど、必要な筋肉や身長はあった。
初めての大人の男の人なのに自然に後をついて行き歩いている途中にあるアンティークは素人が見ても高そうだなぁ、、と堅くなりかけそうな頃合を赤光はウィットにとんだ話をして和ませてくれる。
それにあわせて徐々に優等生のサガから 正確な答えを出して 突っかかるように答える私にいやな顔一つせずに楽しそうに話を聞く余裕の赤光の対応が心地よかった。
今までもっていた焦り、不安は消えて本音を話している事に気がついた。
、、こんなに穏やかな気持ち、、と時間をかんじることなかったんだなぁ、、ため息か吐息が足りなくなるほどの安心感を一杯に感じて ちょっと心地よくて息を吐き出した。

その音を聞いて
「私の話はつまらないですか?」
私を心配する目で赤光は聞いてきた。
「いえ、、ただ。安心しちゃって」

 蝋人形になるか、現世に戻るか自分で決めなきゃならない。だけど現世に戻ってもまたいつもと同じ自分を演じる生活が待っている。
誰も私を必要としていない 強い自分じゃなく 本当の弱い自分は他の人から見て役に立たないから。
 見せ掛けの誉め言葉で心をつなぎとめているのにも 乾いた暮らしにはウンザリしている。もう疲れた。
「私を蝋人形にしてください」
少し震えていたのかもしれない かすかな震えを察知して
「本当によろしいのですね?」
念を押し再度聞いてくる赤光だけど お願いしますといい返事を待った。
「、、、分りました。私についてきてください」

薄暗い回廊を沈黙を忠実に守っていた赤光が 私に質問をした。
「貴女は忘れていませんか?」
「忘れる?、、何を?、、、」
 目を細めて私を見下ろす赤光の目が少しかげりがあるように見えた。
S−Iとかかれた扉の前に赤光は止まり 扉が開かれる。忘れていたものを聞く音を掻き消す音とともに何もかも開放して刻まれた16年間の記憶も思いも消えていく 体が今更震えだした。
頭では分っていても 体は自傷行為をしている時と同じように拒否しかかっている。

目の前にあるカプセルへ促す声を聞き ここまで来たからにはもう後にはひけない。
 カプセルの中に入り 覚悟を決めてドアを閉めたらすぐに足元から紫色の液体が溢れ出てくる。
その液体は徐々に足、首の所まで達してとうとう息ができないと ぎゅっと目を閉じていたけど地上にいた時と同じように息ができる。
苦しくない うっすらと目を開け 液体の中に包まれている今の感覚を表すと 地上の上でする息よりも澄んでいる。
そして母体の中にいたかすかな記憶(体が覚えている)赤子はきっとこんな安心感と温もりを感じたのかもしれない。
生物の授業で扱うホルマインもこんな感覚なのかもしれない、、だんだんわけのわからない方向へ思考回路のスピードがゆっくりと 遅いけど確実に停止していった。

「あの子ってつまらないよね」
冷たい言葉で思考回路が復旧して声が聞こえる方へ進んだ。
小さな子供は声の主から体を突き飛ばされ ゆっくりと立ち上がって文句をいうわけも無く姿を消していく。
 そして景色が変わり その子供は声を押し殺してないていた。、、私、、。姿形は暗くて見えないけど 直感して何やっていたんだろ私は、、どうしてあの時はっきりといえなかったんだろう?

自分の虚勢ぶりを客観的に見ていて 自分が弱い事を見せ付けられているみたいだった。
あの頃から自分は視力が悪くなっても 眼鏡をかけずに他人の目を見ることを拒んだ。
人と目を合わせると強がって、明るく振舞って 友達が出来たなんて思い込んで保っている自分が毎日のニュース、新聞のように無味乾燥に次々に映し出されてくる。
よけいに嘘が、めっきがぼろぼろと崩されていく。

「もう、、いいよ!!やめて 人形になるって言っているんだから映像消えてよぉ、、、」
 喉が痛くなる 渇いた喉を震わせて大声で懺悔を請うかのように叫んだ時映像が消えて 一人の男の人が、、赤光じゃない人が笑って立っている。

「こんにちは咲さん」
鈴のように凛と耳の中に心地よい声が私の名前を発する。
「どうして私の名前を知っているの?」
赤光にも名前を教えていない カプセルから出た蝋人形の館では案内人の人しかいないと思っていたのにどうしてこの人は私の名前を知っているんだろ?
 昔読んだ本で1番聞いていて心地よい声は 自分の名前を呼ばれてときって見た事がある。
両親からも学校からも名前を呼ばれる事が無くなった最近の耳に 声の質以上に心地よく心の中のささくれを吹き飛ばす風を感じていた。
「僕の声聞き覚えない?」
クスリとわらい 彼と話した会話と単語を繰り返し反芻させて
「私の頭の中で聞こえている声 その声なら、、」
「この姿で会うのは久しぶりだけど 僕は君の中で問い掛けていた犯人なんだ」
 誰もこんな事突然言われても信じられない。笑っているけど決して私をちゃかしたり 騙したりしているようには見えなかった。
現実にありえないと肯定する気持ちとずっと聞いていた声は彼しか出せないから嘘なんかじゃないと否定する気持ちが頭の中でぐらぐら揺れている。

 考えすぎて足元の力が抜けていくけど 抵抗せずに自然にその場に座り込んだ。
手を差し出されたけど、第二人格かもしれない実体化の声の持ち主の存在を最後の最後まで信じきれずにじっと彼を見上げる。
軽々と私の体を立たせて支えてくれる力強さと 触れそうで触れていないけど腕の体温がカプセルの中にいた感覚と何故か懐かしい感覚が溢れてくる。
 どうしてなんだろう、、どうしてこの人を見ているとこんな感情が出てくるの?
「あり、、がとう、、、」
自然と出てくる感謝の言葉 たどたどしい喋りに気恥ずかしくなって顔がまっかっかになっているのを見て
「やっぱりその顔がいいよ」
ぽんと頭をなでられてしまった。
 どう見ても同年代の人に子ども扱いされているけど その手が暖かくて 安心している。
さっき以上に体温を感じて 心音を聞いて こみ上げてくる懐かしさが 本心を隠す前のありのままの自分でいた過去をよみがえらせた。