誰かを愛する事 それがこんなに自分を変えるとは思わなかった。
これまで違う女性達と関係をもっていたけど心は癒されなかった。快楽と言う媚薬にすがりつき 自分を保っていたのかも知れない 愛なんてくだらないものさえ思っていた 彼女に出会うまでは。

 今回のお客様は第二人格の人を見て 困惑しながら彼の事を見ている。
思い出したくても中々思い出せない はがゆさから唇をかんで辛そうに彼を見てる。
彼は彼で 彼女を見て愛しそうにその視線を受け止めて 彼女自身が語る事を待っている。
 その空気が何時までも続いて欲しいけど でもこのままだと彼女は決心をつける事ができない彼はそれを分っているから 何も口出しをしない。
「お客様 気分転換にお茶を飲みませんか?」
 2人の前に姿をあらわして 殺風景な空間からテーブルとソファーがある部屋に2人を案内した。
いれたての紅茶を2人にだして、場が和んでいるけど彼女は以前かたくらになっている。
「僕は、、君の」
かたくらに思い出そうとしている彼女を見つづけて 彼は自分で正体を言おうとしたけど私は止めた。
「少し私の話を聞いてもらいたいのですが よろしいでしょうか?」

 生まれた時から英才教育を施され 物心ついた時には一人広い部屋で世界の情報や出来事や知識を吸収している事が当たり前だった。
両親の顔は見た事が無い。物質的には豊かな環境だけど誰からも愛情をもらった事の無い環境だった。
吸収する事もあきた空白の時間 あこがれた外の世界をイメージしてブラウン越しから流れる情報を頼りに芸術に趣を入れたら見事花開いて若干9歳で賞をほしいままに手に入れていた。
 家族と言う空間に入ったのは その後だった。

冷え切ったすぐにも崩れそうな 信頼も安心も感じられない砂の家みたいだった。
弱みを握ろうと視線を張り巡らせて腹の中を探り合って、卑劣な手段を使ってでも結果を得る男とその男の妻は私の本当の両親を殺して
物心つく前に自分の手の中に入れられた事を知ったのは家族に入る前から知っていた。
朝から夜まで 防音効果がある家に2人はお互いの愛人を連れてきて体を重ねる醜い光景は愛し合う事じゃなくただ快楽を得る為の行為、、
冷めた目でさげすんだ目で2人を見つめながら何度もここから抜け出したい 吐き気がする胸を押さえて消えてしまいたかった。
そんな中で例え誰かを愛しても本当に分かり合えない だったら相手を利用すればいいという考え方が根付いていった。

 真っ白なキャンバスに描かれたものが絶賛され テレビ、グラビアがろくに見ていないくせに歯の浮く誉め言葉を羅列する。
喜ぶ事無く 表では笑っているけど 吐き捨てるように「くだらない」と一人言っている自分。
描いた絵について聞かれた事を丁寧に答え 「貴方達はどこに惹かれてこの絵がすきなんだ?」と言いたい。言ったらきっと絶句するから その顔はきっと陳腐だから。

 あの男は常にトップに立て トップにならないやつは要らないと教え込まれていたが どうでもよかった。
そのいい付けを守りながら絵を描いて 行き詰まりがため息が足りなくなっていく。
 苛立ちも、不満も、さげすみも、さび付きそうな理性を持ったまま 誰も愛し、愛される事がなかったそんな時に彼女とであった。

 どうなってもいい むしゃくしゃした気持ちのまま車に乗っていた時 車道に出てくる女の子に気がついてブレーキを思いっきり強く踏んだ。後少しで女の子をはねそうだった。
 女の子はその場にへたり込んで立ち上がれない様子だったから慌てて車から出る。
「大丈夫ですか?」
声に気がついて女の子の視線が私を見上げる。
 真っ白な肌にいまどきの女性には見れないサラサラの黒髪、不思議そうな目は光の加減で色が変化しているように見える。
見ていて飽きない大きな目が私に注がれる。
「、、、あ、、大丈夫です」
戸惑いが入った声で対応するけど へたり込んだ衝撃で足を怪我しているのを見つけた。
大きな目が強い視線が受け止められずに 誤魔化すように足に触れて気をそらせた。
「痛かったら言って下さい」
「だ、、大丈夫ですから、、、」
さらに困った声で平静を装っているけど 触れた足は震えている。顔は徐々に真っ赤になっていった。
「ちゃんと言ってくれないと分りませんよ。(痛み)感じているのですか?」
「わ、、私は別に」
 しまった、、別に意味に取られてしまった。あたふたと手を離して
「すみません。無理して大丈夫とおっしゃっていたから」
女の子の手を取って立たせようとするけど
「腰が抜けて、、起き上がれない、、、」
小さく呟いた 手だけじゃなく体全体を使って彼女を助手席に座らせて不思議とこんな言葉を発していた。
「よかったら僕の部屋で手当てしましょうか?」と声をかけていた。

 芸術家として成功を収めていたからさっさと家を出て都心に近いマンションで一人暮らしをしている。
何故自分はあんな事を言ったんだろう?さっきの行動をふりかえりながら どうして彼女もついてきた事がもっと不思議だった。
「ここのソファーに座ってください。薬を持ってきますから」
やんわりと態度を変えないまま薬箱をもってきて黙って手当てをしていると
「ここにある絵は全部あなたが?」
今では私の顔を知らない人はいないぐらい 浸透している。
「ええ。それがどうかしましたか?」
ここでファンだといって薄い知識をいい専門家ぶってくるのか 最近では自分で描いたものすら信用も愛着もなくなりかけていた。
「私は絵の事全くわからないけどこの絵素敵です」
素敵と言われた絵を見ると 閉じ込められた空間から情報を集め書き上げた外の世界はこの部屋の小さな片隅に置かれた絵を見て
「私もそこへ行きたくなってくるから」
嬉しそうに笑う彼女と最初にかきあげた絵その絵を見ていると 完成させるまで思っていた感覚 絵に込めた気持ちが浮かんでくる

「きっとあなたはすごい芸術家になれますよ。きっと」
、、って、、なっているんですけど、、。純粋に私の肩書きを知らない人と初めて出会った 一人の人間として見つめてくれる人に出会えて
「面白い方ですね」
不思議そうに目を広げて
「、、どこが?」
「全部です」
しかめっ面しながら 話をしていると午後六時になっていた事に気がついて彼女と別れる時
「私 崎朋華といいます。あなたは?」
自己紹介をし合って また会う約束をしていった。

「それが彼女とであった出来事と日でした」
2人はじっとその話を聞きながら 
「それで赤光さんはどうなったんですか?」と彼が
「え!?赤光は人間だったんですか!?」
驚きながら私の顔をまじまじとみるお客様は さっきまでのかたくらさがほぐれたみたいだ。

「ええ、、自分の名前はどう思い出そうとしても分りませんが 人間ですよ」
「綺麗すぎて人間じゃないと思いました、、」
「これでも規則ただし生活と運動をしていますから」
にっこり笑い お客様の紅茶を注ぎだした
「そしてその朋華さんとはどうなっていくのですか?」
興味津々で彼は私に聞いてくる 時間も時間だから話を中断させて 明日来るお客様の準備をするために明日話すといい 話を切り上げた。