翌日私と彼は赤光が人間の世界にいた時の話を聞き終えて短い沈黙が3人を包む。
話をしている時は物腰柔らかい口調だったけど 恋人の朋華さんになると宝物をそっと扱うような やさしい顔で話をしてくれた。
とても大切な人だったんだなぁ、、、。と思いながら正直に恋心を語ってくれるから その話を聞いて照れくさくなって・・でもとても穏やかな気持ちになっていく。
「どうして彼女はここにいないのですか?」
話をさえぎって赤光に聞くと 淋しそうに笑い これから話しますといい話を続ける。
「、、彼女は私の育ててくれた父親、、に殺されました、、」
「!?」
 怒りを押さえているけど憤りは表情に出ている 眉をひそめ唇をかみ締めて言葉をつむぎだす。
「目の前で大切な人が殺されても何もできなかった 無力で非力な自分を呪い続けた時 この館にきて案内人として 貴方方の選択を見届けている今に至るのです」
「赤光さんは彼女の事を今でも?」
彼がきくと 頷いて
「ええ。今でもこれからも彼女、、朋華にこの心もすべて捧げています。ただの罪滅ぼしだって思われるかもしれませんが 生きていて自分の手で変わっていく事はありますから」
 自分の手で、、変わっていくこと、、?
「なによ、、赤光 どうしてそんな悲しい目で話をしているのに 変わっていくことなんてないよ!
結局ただ時間が流れて その人の事美化しているだけじゃない 思い出す事がすくなくなっていくだけじゃないどう頑張っても何も変わらないよ かわらないよ、、」
ひどい事言っている だけど叫びたくて堪えられずに言ってしまった。
「じゃあ 君は彼女の後を追っていく事が幸せだっていいたいのか?」
「違うわよ。ただ、、」
 答えが出てこない、、。自分自身の幸せすら考えていないのに他人の幸せはもっと意見がいえない。
幸せの公式 1000通りのシュミレーション当てはめてもどれもしっくりと「自分の幸せ」の枠の中にはめ込もうとしても収まってくれない いつもいつも雲を掴むように楽しい時間や思い出は過ぎていく。
「もし死んでしまったらこうして貴方方とお会いする事もなかったんですよ。精神病院に入れるほど衰弱していた人間がこうして話ができるようになったのも 生きて 生き続けているからなんですよ」
「そうですね、、。本人にはさりげない一言だけど奮い立たせる言葉で強くなれることがありましたから」

  どうしてなんだろう彼が話すたびに どんどん胸が苦しくなってくる。
毎日頭の中で聞きつづけてきた声なのに とても懐かしくて 優しくて 安心している。
「、、、開、、夢、、、?」
 赤光と彼ははっと私の方を振り返り
「思い出されましたね」
 抑制している赤光とは対照的に彼は嬉しそうに笑った。

 小学校時代彼と私は会っていた。
この時から学級委員をやらされていたから クラスの事を殆ど自分ひとりに任せられ、体のいい先生の使いっぱしりじゃないかと反発しながらも任された仕事をこなしている時 彼だけが手助けをしてくれた。
 たどたどしく本音を言っている私に もっと自分を出してもいいと言ってくれた彼将来なりたい未来予想図 学校を探検して 家と学校を往復している生活に新しい発見を世界を見せてくれた

心のよりどころ 信じられる人だけど
「どうしてここにいるの?開夢は、、交通事故にあったって、、」
 いつものように学校に行くと 先生が重々しく口を開いてクラスみんなに通達した。
いつもの時間 いつもの行き帰りの道 いつもの場所 クラス 規則正しく時計の音が聞こえるその日から私のいつもはなくなってしまった。

あかるくなりかけた 心を開きかけた瞬間 開夢の席に花が置かれ 何時の間にか席自体なくなって時もう一人だと思い知らされた 喪失感と周りのプレッシャーに耐え切れずに私は忘れる事にした。
 今までのよい子を演じる自分に 完璧に物事を乗り越える事に力を注いで 忙しい日々を過ごして眠って 忘れるようになっていった。 開夢の存在も含めて 何もなかったように。

「、、僕の体は植物状態なんだよ」
無機質漂う空間に一つのベットと赤や白や緑の電気コードに埋もれてあった体を3人で見ている。
そっとその体を触れると
「事故からずっとこうやって命をつないでいる。一週間に一度は来る両親から君の事を聞いたよ」
よく私は開夢の家に遊びに行っていた。一緒に植物を植えたり 私のピアノに合わせて歌ったり 思いっきり笑って時間が経つのを忘れていた
あの頃 事故から開夢の家を通るのが辛くて、学校の席があった場所を見るだけで苦しくて 泣き出しそうだったから駆け足で帰った。

「彼が今日の契約者です」
赤光が私と開夢の顔を淋しそうに笑って目を閉じた。
「魂は君の中に入り どんどん変わっていく姿を見ていてどんな言葉も届かない よけい辛くさせてしまった。
赤光さんの力で実体化しこうして君に会えるようにしてくれた」
「どうしてこんな薄情な私の事を考えてくれるの?」
「昔のように笑って欲しかった ただ頭の中で言葉をかけることしかできない歯がゆさといつまでも目を覚ますことの無い体を維持しつづけてしか生きられないなら 僕の命を君にあげる」

 景色が変わり 踏み切りが下る中私は中に入り込んで進む。
館じゃない現実世界に戻ったのか現状を把握できないまま 闇雲に進もうとすると電車がやってくる。悲鳴のようにブレーキの音が鳴り響く
声も出ない 体が動かない ただ向かってくる電車しか見えなくなった時思いっきり腕を引っ張られ電車が通過した後 私は踏み切り外に出ていたから無傷だった。
「両親の泣き顔を見るのは 僕の家族だけでいいから 咲の家族まで悲しませないで」
 館に来る前に私が踏み出したのは踏み切り 何も考えずに渡った瞬間意識が消えて館にきていた。
「貴女の魂を実体化させ 館に招待したのです」
「じゃあ現実世界では私は死んでいるって事なの?」
「ミンチにはなっていないよ」
「え!?」
「今僕が手を引っ張ったから 踏み切り前に無傷のまま意識不明で病院のベットにいるよ」
「魂の彼を実体化にして 現実世界に手を貸したから こうしていられないんです」
 徐々に彼の体が消えていこうとしている。私を助けたから、、、
「やだ 消えないで」
「名前の通り夢を開けられなかったけど 咲は自分の夢を将来を掴んでたくさんの結果を咲いて 笑って欲しい」
「ずるいよ、、美味しい所もっていって」
第二人格としての声は苦しい時 悲しい時いつも反発しながら支えられていた。
正しい事を言っているから 素直に受け入れられなくて受け入れたら自分が消えてしまいそうだったからちっぽけな自分の自尊心を守っていたから彼はぽんと頭をなでて見えなくなってしまった。

ベットに横たわる表情はほっとしたような 安らかな表情に見える機械の音が同じ音しか聞こえない ピーーー上にメモリが上がる事もなく 下がる事もなく無機質な部屋に一定の音が流れる。
その音を聞いて看護婦さんが来て蒼白した顔で先生を呼びに出る。

 あれから10年ずっとこの状態で開夢は現世を私や自分の両親を見つづけていたのかと思うと涙が止まらない。
どんなに叫んでも誰にも届かない 両親の姿見て重荷を背負わせているけど自分で自分の命を絶つこともできずに、、、。植物状態の息子が目を覚ますのを待ちつづけている両親の悲しみと張り詰めた表情
知らせを聞き真っ青に でも少しだけ安心したように見えた。

緊張から抜け出せた 諦めとどこにもぶつけられない怒りが悲しみ・・辛かったのは私だけじゃなかった。目の前に動かない息子を見つづけて 信じて待ちつづけての生活
 わずかな希望を打ち壊すように 生命維持装置はバイタル0を表示し機械的な音はあの時聞いた時計の音に似た空しい音が聞こえてくる。
何を言うわけでもなく流れを見ていた赤光の視線に気付き 涙をふいて
「こんなに温かい気持ちがあったことに 開夢のことを思い出させてくれて ありがとう」
「これからどうなされますか?」
「開夢がくれた命 必死で私を引っ張りあげてくれたそれに負けないように最後まで大切に使います」
強がって無理に笑っているけど 悲しい。背中を向けて溢れ出す涙を声を消そうとしていると
「赤光、、離して」
線の細い体をしているけど大人の男の人としての頼りがいと体温、鼻をくすぐる香水の香りと体をすっぽりと囲む腕が心まで包み込んでくれるようにが伝わってくる。
「こうすれば見えません。決して見えないので だから一人で泣かないで下さい。思いっきり泣きたい時に泣いておかないと これからのスタートを切る瞬間と決心が鈍りますから」
「赤光は彼女さんがいなくなった時泣いたの?」
「、、。涙で願いが叶う恋じゃないですから。泣く事も忘れここに来るまでずっと彼女の体を抱いているだけでした」
 
 あれからどれくらい時間が経ったのか覚えていないけど気分はすっきりして腕から出た。
「ごめんなさい。上着ぬらしてしまったね」
「いいえ。少しでも悲しみが癒されたのなら」
 服の中から銀のブレスレットを私の手の渡してくれた。
「ここにきた人は青い石のブレスレットを渡すようになっているのですが、少し力を使いすぎて石がなくなりました。彼が作った物ですが受け取ってくれますか?」
そのブレスレットを握り締めて頷いた。
「これからも沢山の事がありますが それを乗り越えていけるように月並みですががんばってください」
「うん」
「私はただこうして祈る事しかできませんが 貴女には帰る場所が 必要としている場所がありますよ」
私の体も徐々に消えてしまう その前に
「さっき言った事訂正する。変わら無い事なんてないって 私次第で世界は変わるんだっておしえてくれてありがとう」

 病院のベットに寝かせられた体を動かしてみると口々に私の名前を呼んで心配して疲れきった顔の両親と友達がそばに立っていた。
 近くにあったのに私は何も気付こうとしなかった、、、。強くブレスレットを握り締めて感謝の言葉とただいまをつげると おかえりと返してくれる。
 開夢、、心配かけてごめんね もう大丈夫だから私 自分の足で歩いていけるから。

私は「蝋人形の館」の案内人ですが人の心にある不安や迷いを取り除いて 本当の望みや願いを引き出し実行する者 願いをかなえる万能な力は持ち合わせていません。

 少しでも彼女の傍にいたい。魂になってもなお強く叫んでいる思いに 私は彼を館に 契約者になった。
「その方にお会いするには 力を使いますが実体化したらいられる時間も少ないですよ」
「かまいません」
「よろしいのですか?」
「ええ。僕は必要だと思っているから迷いはさらさらないですよ」
「貴方の魂は消えますが 記憶を思い出した彼女はそれで喜ぶと思いますか?」
「きっと泣くかもしれないけど 僕の分まで一杯咲いてくれます 彼女の力になりたいんです。僕に力をかしてください」
 穏やかに笑いながら迷いが無いまっすぐな目で告げた。その視線を受け取って
「わかりました。その願いかなえましょう」
そして契約は実行され 彼女と彼をあわせる事が私の仕事だったけど実体化の姿のまま彼女を踏み切り前に引っ張った行動をカバーする為に私自身の力と石の力を使った。
契約外で 本当は力を使ってはいけないけど彼の切実な思いを彼女に届けたかった。

  少しでもお客様の祈りが届くように 傍観している二次世界の立場と力を使って 喜んでくれるなら私は後悔はしない。迷いを振り切って立ち上がる姿はまぶしいほど綺麗だから。