「季節0」 BGM 「FINAL PLAYER」と「BREATHLESS NIGHT SLIDER」
暑いのか寒いのか 気まぐれに変化する気温と湿気 じっとりとまとわりつく空気6月の梅雨 1番嫌いな季節は何?と聞かれたとき即答で言ってしまうかもしれない。
冷たい雨と夏が近づく暑さで体の調子が悪くなりそう。春夏秋冬どの季節にも当てはまらない どこのカテゴリーに入れていいのか分らないから、今の季節をゼロと言っている。
雨上がりよどんだ空気に 吐く息は少し白い。傘を降ろして近くのコンビニでチョコレイトを購入。
じっとりとしている空気に今の時期は溶けるからと嫌われがちな甘ったるいチョコレイト比例していいじゃないかと思いながら口に機械的に運んでいく。
雨がまた降り出しそうなほのかにダークな空を観賞しつつ濡れてもいい覚悟でそのままゆっくり歩いていく。あてもなく 家に帰らずに思いつくまま歩いていく歩いて行き着いた先は
「ここは蝋人形の館です」
異空間 時間も季節も定まっていない場所だった。
驚きを隠せないままこのまま自分はどうなってしまうかより先に この館のシステムも聞いてみた。
選択するまでは自由にここにあるものや好きな事をしてもいいといわれたから早速紙とペンを貸してもらいここにいる滞在記を書いてみる事からはじめた。
応接間、キッチン、蝋人形にするA〜Zまでかかれた部屋それだけでも広いのにまだ他にも沢山部屋がある。
その部屋の中で使っていない部屋を貸してもらって今後の選択をしている。
今の世界に環境に満足しているのかというとしていない 退屈な日々を壊し 自分の思っている事を貫き通せるほどの強さを持っていない。
掃いて捨てるほどいる口で言っても実行できないタイプでこれといった特技もない 目標も定まらずふらふらと無駄に生きている。
「、、、だからここに辿り着いたのかな、、」
学校と家の往復で自己価値観も認められず我慢をしている生活と24時間が短く感じる時間の少なさ
こうやってゆっくりして赤光は焦らなくてじっくりと自分とそれからを考えてくださいと言葉をかけてくれる誰からも何も言われない時間をここで思う存分満喫しているのに
どうしてだか焦っている。ここにいる時間は現世の時間には含まれない どれだけ何年いても時間は経っていないことになっている。
時間的ゆとりは沢山あるのに 日がたてばたつほど焦りが募っていく ため息が増えてきてくる。
この場所が居心地が悪いとかじゃなく居心地よすぎて、食事も一人で味気ないからと作った食事を赤光と2人で必ず食べ初めは男2人もどうだよ、、、と抵抗があったけど
会話しながらの食事は久しぶりだけど一人でたべるより美味しかった。
仕事が終った後、何かと僕の事を気にかけてくれてずっとこのままでもいいんじゃないかと思ってしまうけどこのままでいいわけはない。
早く早く選択をしなきゃ、、と考えると苦しくなる。
一体自分はなにをしたいのか すればいいのか今までやってきた事を振り返っても思い出せない見つからない 不透明な自分と気持ちをかき消すために
今日も紙とペンを使って日記だけじゃなく思いついた言葉を重ねて話や詩も 寝る事も忘れて同じ事を毎日繰り返している。
ここにいる事がだんだんだんだん 居心地がよすぎて引篭もるにはぴったりの場所だなと思ってしまったあたりかなりまずいなぁ、、と焦りに拍車をかける。
情報が無くても ある程度の娯楽が無くても人間生きていけるもので初めは好きなテレビやマンガが見れないと思っていたけどそれも大して気にならなくなっていった。
快適に整えられた空調 手入れが行き届いている綺麗に整えられた部屋に相応する調度品 鼻をくすぐる香り
どこを見ても綺麗で完璧に近い空間
だけど、、外の景色は無い 完璧すぎてどこか無機質感が感じられる。
紙とペンを走らせて ただ思いついた言葉や詩を書きつづける その書き上げたものを赤光は片付けつつ感想をいい 仕事に戻る。
その後姿を見送りつつ ポケットから携帯電話を取り出す。
圏外どころか 電波もなにもディスプレイには現れていない 時計代わりになっている刻みも動かないままだった。
助けを呼ぼうとかサラサラ思っていないけど いや、、誰にかければいいんだろ、、例え繋がっていても 僕は誰にに、、何を話せばいいのか、、分らない。
無動作に電話を床において 胸ポケットから銀色のカッターを取り出した。
去年かったちいさなカッタ‐ 買った当初はぴかぴかひかっていたけど今では少しさびているし 歯も変えていないから切れ味もよくない。
外側もくすんできたカッターを迷う事無く歯を1つぐらい出し、ゆっくりと足元へ歯を向ける。
思いっきりとがっている部分と歯を足に刺し鈍い痛みが体から出てくる。
この時だけが僕が僕だって主張している時間のようで、痛みを感じられる時が生きているといる実感を与えてくれる。
太ももだから血管まで通じない 死ぬ危険性はない見えない部分に少し少しカッターの傷が増えている。
そしてカッターは寂れていくまるで僕の心のように
煮えきれない気持ちで死ぬ覚悟もなくこんなことしているんだから無意味だなってでもなにをしていいのかどこへ進んでいいのかはっきりしない 分らない。
自分の事なのに 他人事のように判断している毎日 ただ重たくて だるくてそれを忘れたくて再度深く歯を沈めようとすると動きが止まった
「何やっているんですか!」
赤光が強い力でカッターの動きを止めて怒るような目で 強い声で僕を制する。
「、、殺傷能力ないから大丈夫だよ、、」
こんな事を聞きたいんじゃないと思うけど 冷めた声で事務的に反論らしき事をいう。
「ばい菌が入って 壊死する事だっ、、そんな事が言いたいんじゃありません。どうして自分を傷つけているのですか?」
深い呼吸をついて 僕の手を離さない 僕が話すまでまっていてくれる。
「こうしている時が 痛みだけが自分が自分だって証明してくれる 弱い人間は誰も要らないだろ?」
沢山いる人間の中から同じスタートを切ったのに 徐々に差がでて気が付けば僕はこうなっていた。
なにをがんばっていたわけでもなかったから当然だけど、その差を見てますます劣等感に陥ってしまう。
「だれだって強いわけではありませんよ。無論私だってそうですよ」
言葉が浮かんでこない 吐き出したい気持ちも何もかも今は浮かんでこなかった。
「、、、これ私が預かっておきます。お風呂で傷口洗ってきてくださいね」
ゆっくりと開放してカッターを取り その代わりにバスタオルと洗面用具を渡してくれた。
ここは不思議 時間間隔も焦りもない時間があるのによけい自分と向き合っている。
見なかった夢も見るようになった 嫌だった 見たくなかった景色が思い出がフルカラーで映し出され、それが自分を突きつけられているみたいで嫌だった。
嫌な汗を流して 冷たいシャワーで傷口もろとも頭を冷やしてみる。
温感冷感で初めは抵抗あったけど 徐々に体が慣れていって気持ちがよくなってきた。
いっそのことこの体ごと 溶けて 消えてしまえばいい。
臓器も目、耳も体のすべて変わってしまえば痛みも感じなくなるのかな?悩みもなくなるのかな伝わらない事に、伝えられなかった言葉に悩まなくていいのかな?
痛覚もない 呼吸をしなくても体全体がしてくれる 独特の声と唄で仲間とコミニケーションが取れる魚になりたい。
不毛な考えも何もかも人間としての昨日もすべて捨てて、呼吸をわすれ ただ泳ぐ揺らめく 人生もふくめた水中を駆け巡る魚になりたい。
シャワーを浴び終えて外に出ようとするとひどい立ちくらみが出てくる。
起き上がろうにも起き上がれない、足に力が入らない 自分の足じゃないように感覚がなくなっている。
「、、、これが貴方の限界です。心が望んでいる事と体が 意識が望んでいる事の二面性が貴方の体で拒否反応をおこしているのですよ」
「、、、、、、ウルサイ、だまれ!!」
「何が怖いのですか?恐れているのですか?本当に欲しいものを分っているはずですよね?」
ゆっくりと綺麗な声がつむぎだす言葉 それがよけいに神経を逆撫でする。
「僕は、、何も欲しくない 望んでいない」
感覚がなくなりつつある腕を耳に当てて 赤光の言葉を聞かないようにするが透りのいい声は鼓膜を刺激する。
「呼吸をして ゆっくりと。焦らなくていいから貴方自身の力で」
呼吸なんてとまればいい,,声も何もかも吐き出して 跡形もなく
「選択していなかったよな、、。赤光 僕を、殺してくれ」
「!?」
「現世にも記憶が残らないように ここで僕の存在を 記憶の中にいる部分も含めてすべて、、消滅して」
そうすれば君もくるしまなくていいだろ?曖昧な言葉 守りきれない約束 つぎはぎだらけの僕に愛想尽かしているんだろ?
「貴方は何から逃げようとしているのですか?」
「僕は何もにげ、、逃げるほどの人はいない」
「おや?私は人限定とか聞いていませんよ?貴方の心の中に住んでいる方が悲しみますよ」
「誰も住んでいない」
振り払うように大きな声を出して否定をする。
「人は強いようだけど弱い部分もあってその部分を補う為に弱さを知って無限大に強くなますよ。貴方にも守りたいものありますよね 時に守ってもらっていますよね?」
イライラする、、むかむかする どうして赤光はこんな事を言うのだろうか?
「僕は誰かに守ってもらうほど弱くない!」
「、、、だったらどうして貴方はここに来ているのですか?現世で疲れた方が来るこの場所に」
目を背けた部分を容赦なく突きつけれている 図星付かれているから尚更むかむかする。
「誰かを想っても非力さを感じられるんだから 僕は誰も誰も、、心に入れない。受け入れているように見えても本当は解ったふりしているだけで、、、」
呼吸が苦しい 荒い 朦朧と喋っていくたびになってくる。
笑顔を装って抱きしめられたとしても、ただもてる力で返す。
それ以上の事を僕自身からしないそれ以上の事を望んでいても 実行したらもとには戻れなくなるから。
失った時のあの喪失感を 諦める事を 身のほどを知った事も含めて 知りたくないから。
「失いたくないから、、」
「私は失う事よりも 一人になる事が怖いと思います」
眉間に眉を寄せて押し殺すような声と同時にシャッターが閉じられたみたいに意識が消えた。
、、、、あれからどれくらい時間が経ったのか 考えないようにいつもゆっくり目を開ける。
声を嗄らして叫んでも 手元にすくって流れ出てしまう水のように消えて、真っ暗な空間だけどどこか闇が心地いい。
声を出してみても 自分では聞こえているけど誰もいないから伝わっているのか解らない。
同じ行為そぶりを演じて、当たり前を装って本当にしたいことを押さえて諦めそのたびに胸にとげがさされるように痛み出していく。
引かない熱 苛立つ胸の奥底 抱えきれず 知れれたくなくて 体ごと凍えて 凍り付けば言いとさえ思った。だからこのまま眠るように 心地よい気分でこのまま記憶から消してもらえたら楽なのに
「、、、」
人がいないのに僕以外の声が聞こえる。
不快な声じゃないけど どこか悲しそうに 小さな声で言葉が聞こえてくる。
ヨワイ モロイ ナミダ 脈略のなさそうな言葉がかろうじて聞こえる。
言葉以上にもっと僕の心の中に伝わってくる気持ちや 記憶が蘇ってくる。
自分以外の接してきた人の声 表情 過ごした時間 忘れかけた僕の笑顔 鏡を見るたびに暗かったから鏡を壊して ねじまけて 見ないようにしていた。
どうしてこんなに悲しくなってくるのか?
解らないけど胸を締め付けられて、なんとも言い難いこの思いと体温と一緒に伝えられたらいいのに。
魚になれないなら言葉を覚える前かしこまった言葉じゃなくて 触れて 触れられて体温だけじゃなくて震えも強さも弱さも何もかも朧毛だけど伝えられたらきっと笑うだろうか?
困ったように笑って その場にいてくれた。
その時今ここにいるように心地よい気持ちだったのかもしれない。
それを知ってしまったら 覚えてしまったらもう戻れないと思ったから。何も知らないふりをして表面的にしか受け止めなかった。考えなかった
「逃げているだけだった、、、、」
伝わらないんじゃなくて 伝えなかったから 弱さをこれ以上見せたくなかった。
だんだん無口になっていく強引に毎日を何となく過ごして似合っていない、無理していると言う指摘を聞こえないふりをして
いつだって命をたつことはできるけど 今やれる事は死を望んでいるんじゃなくてこのわだかまりを解消することだった。なのに僕は
はっと気が付くと心地よいベットの上だった。
頬を伝う冷たい感触 寝ながら泣いていたみたいだ。指の腹で涙をぬぐっていると
「気がつきましたか?」
水差しと一緒に赤光が声をかける。
気を失ってここまで運んできてくれたんだろうか 何故か風呂場にいたのに汗ばかりながれていた。
「部屋遠かったので私の部屋に運びました。体は大丈夫ですか?それとわかりましたか?今すべき事を」
「、、、、さっきの消滅無かった事にしてくれないか?」
「気まぐれに言っているんじゃないですよね?」
ゆっくりとうなずき 一言一言選ぶように
「僕にはまだ、、遅いのかもしれないけど今を生きたい」
「わかりました。今日はゆっくり休んで 現世に帰りましょう 心に住んでいる方のもとへ」
「ありがとう」
優しい声で笑いかけてコップに冷たい水を渡してくれた。
「あのさ、一つ聞いていい?」
「ええ お答えできる範囲なら」
館内もすごかったけど 赤光の部屋を見回すともっと赤光らしいものや面白そうなものが調度品として並んでいる。だけどどこか淋しそうな 綺麗過ぎてはかない感じがする。
「さっき一人になる方が怖いって言っていたけど 経験者として言っていたのか?」
「、、。だから私は貴方が消滅する事だけは防ぎたかったんです。まだ大切な人が現世にいるのに」
「まだ?って事は赤光は」
「私の恋人は殺されました。そんな思いをするのは私一人だけで最後にして欲しかったから。貴方が消滅したらきっと心の中にいる方は悲しみます 深く」
「、、、ごめん、、」
どう言葉をかけていいのかわからず ただ謝罪の言葉をいうしかなかった。
「いえ 貴方が気に病む必要は無いですよ」
赤光の真摯な目と優しい声に泣きそうになって直視できずに視線が泳ぐ そしてある一点に止まった。
「、に、蝋人形、、」
小さな呟きに答えるようにゆっくりとその場所に赤光が歩いて、その人形に触れる。
「さっき言った私の恋人です」
愛しそうに 壊れ物を扱うように触れる。
「どうして、、、人形に?」
「前の管理人の方の厚意で こうして自分のそばにいられるように、、歪んでいますよね 貴方からみれば私の方が」
その笑いは自嘲のように見えた。違うとすぐにいえなかった 歪んでいるのはわかっているけど二人の表情がとても調和していたから。
男に綺麗は怒らせるけど赤光は綺麗の名詞が合っているルックス。見ていてぽーっとするけど 気遣ってくれる時や言葉を掛けられていてもどこか機械的なシャープさも感じていた。
人間じゃないかのように思えたけど この表情を見てその思いも払拭させられた。
「出すぎた口ですね。私は仕事がありますからそこで休んでいてください」
人形とともに扉をしめた。人形を見て一瞬ぞっとしたからそれを感じたんだろう。
不思議な空間の最後の時間呼吸も苦しくなくて 今まで眠れなかった分取り返すように早く眠りについた。
現世に戻る扉の前まで赤光とは何を話していいのかわからず 困っているのを察知して赤光は何も話し掛けようとしなかった。
「貴方の願いが叶うといいですね」
ここにきた記念のブレスを渡して 扉を開けようとする。
本当にこのまま、、何も言えないまま 帰っていいのだろうか?焦りが言葉をさらに詰まらせる。
「、、、、上手くいえないけど 僕ここに来て赤光に会えて今する事解った わだかまりを消そうとしていたけどその原因を見ようとしなかった だから、、、」
「呼吸がおぼつかなくなったんですよね。自制する事も大切ですが自分を殺すのとは違います。今度はいえ今度でなく生きていてやり直しはききますから。だから月並みですががんばってください」
貴方のペースでゆっくりでもいいから僕の言いたかった事を変換して 胸ポケットから
「これお返しします。もうあのようなことに使わないですよね」
カッターを受け取るとぴかぴかに光っていた あれからメンテナンスをしてくれたみたいだ。
「ありがとう」
その言葉と同時に扉の中へ進み、再び目が覚めると公園のパティオのベンチに座っていた。
雨が上がっていて少し風がふいている。徐々に雲がなくなり雨上がりの空をみて体を起こし歩いていく。
まずはあの人のもとへゆっくりだけど、前にもらったブレスを鞄に閉まって メンテがかかった手離せなかったカッターも一緒に持っていく。
季節が寒いのか、暑いのか定まらない不安定な季節を憎んでいた。自分を見せ付けられているようだから。
だけど こんなにも綺麗な空と温かい光が勇気付けてくれる格別に澄み切った今の空気に大嫌いだった季節がとても好きになれるかもしれない。
不安定な季節だからと嫌がっていたけどその不安定さもまた季節が送る大切なものだから。
今までであった人も出来事も愛せる気がする そしてこれから出会う人も出来事もきっと ずっと。