虚像 BGM「Strike Back of Psyco」


 神様なんて信じない 私のすべてを奪っていくから
 神様なんてどこにもいない ここにあるのは現実があるだけ 何もかも壊した彗星どんなに祈ってもかえってくるものは 要求と失望と
残酷な答え。不平等な差 そして私の闇はどんどん増殖していく。

うごめく人達の荒れた心 証拠も理由も無くただ勝手に私の事を決め付けて 反論しようものなら疑惑のまなざしを向けて黙らせる。
生きる力を奪って 作り物の操り人形のようにそれが当たり前だといわないでも分る暗黙の了解 薄く口の端を上げて 笑う。

 初めは反論をしていた。だけど力じゃかなわない。
だったらその要求どうりになるしかない。黙って自分はああならない、、と思っても表面上は言う通りに演じる。
冷ややかなまなざしと同情の目されるがまま 積もり落ちてただ落ちる いつかきっと慣れるから、、、
何時しか私の周りの人間の顔がみんな同じに見えてきて、一体誰が誰でどんな存在だったのかさえ忘れてしまいかけている。

 何でも人の言う通りに動くだけの生活 こんな中で私は一人になったとき生きていけるのか、、?
その場所に何があるんだろう?それよりも前に何かあったのか?
 膨らむ疑問、消えていく自信と感情 自分の中の何もかもが泡になって消えてしまいそうで残った感情は
恐怖。

 もし言うとおりに動かなかったら手のひらを返しても当然の態度とどこを見ているのか分らない
要求だけを求める声が口が 本当に私を見ているのか 視界の中に入っているのか私の自信をけしていく。

 本当に私はここにいて息をして イキテイテイイノ?

今私は選択をしなければならない。自らの命を絶って 転生するのを待つか 今の自分を貫き通して生き残る
詰め込まれる公式と正しい答え 正しい物正確な物だけがすべてで間違いは許されないと叩き込まれた。

自分で選ぶ事に対しての 自答、恐怖、喪失、自我、欲望、狂乱、喪失今更何を失うんだろうか?この体 命 カラッポになりかけそうな擦り切れた心で生きることがそんなに価値があるのかな?
教えてよ 答えてよ 回りの大人達に『正確な答え』というものを 納得いくまで聞いてみたい。

「私を呼ぶのは貴女ですか?」
空間をゆがめて現れた男の人
「私は誰も呼んでいない」
男の人の問いに張り詰めた声で答える。
「心の刺を取りたいのではないのですか?」
今の思いが刺としたら必死になって取ろうとしても自分を否定して押し込めていくだけの今、その刺がちくちくと深まって私の中をかき乱す。

「あなたはだれ?」
 表情を読み取ろうと立ち上がろうとするよりも先に 私の目の高さにあわせてかがんでくれた。
こうやって他人の顔をまじまじと見れたのは何日 何週間、、いや何年ぶりだろう?
 憶えていない 気が付けば私は言う通りにいつも動いていただけだったから。
「私の名前は赤光です。ここは蝋人形の館という場所で案内人をしています」
 まっすぐなまなざしを私に向ける それを受け止めているとずっと見ていたくなるほどそのまなざしに嘘がつけなくなってくる。
「本当に心の刺を抜いてくれるの?」
「抜くのは貴女です。私はそのきっかけを作りたいだけです」
 持っていたランプの明るさに 反射的に目を瞑り目の前にある光の感覚が消えるのを待って目を開ける。

目の前には 綺麗なアンティークやテーブルセット甘いお菓子の香り
「まさか、、ヘンゼルとグレーテルみたいに私を太らせて食べるんじゃ、、ないよね?」
目を点にして 笑い
「そんなことはありません。ここではお客様の身を守る事が仕事ですから」
 不思議な空間 はじめてくるのに何故か心地よくて 程よい暗さと漂う香りが調和していて好奇心をそそる。
「蝋人形?」
 渡された飲物を飲みつつきく
「ええ。今からお見せします」
 ぱちんと指を叩くと敷き詰めれた絨毯の先に何かが見えた。
毛足の長い絨毯の感触を楽しみながら その何かに近づいて触れる。
 

 さっきまで暗い所にいたから大分目がなれていて すぐにその何かを見えるようになった視界に白い蝋が丹念に塗られていてる表情や感情まで魂が伝わりそうな 人形がそこにあった。
「温かい、、」
 人肌と同等の温もりが伝わってくる。

「分りますか?ここのある蝋人形は人間なんですよ」
「え?」
「人形になる選択をしたら自分の望んでいる人や場所に送られるのですが行き場のない人はここに置いています」
 義務的に言い放ち 行き場の無い蝋人形を見る目はとても悲しそうだった。何を信じて、思っていいのか 進んでいるのか分らなくなってきている。
 走って、悩んで、苦しんで、行き着いた場所がここで 今までの自分に対しての選択をする。

 一人は怖い 振り返っても誰もいない ただいう事を聞いてきて時間間隔を忘れてしまうくらい自分が消えてあるのはこの体一つ。
安らぎが理解者が 愛してくれる人が欲しかった、、。守る物は何もない 大切って思えるものが無いからどこにも。何も無くなってしまった。

すべてを包み隠す夜が終わり朝が来て、命の誕生と新しい日が来る瞬間 私は怖かった。
鮮やかな光が私の中にあるものをすべて照らして、虚勢を張って保っている部分を壊しそうでそしてまた同じ日が始るから。何も変わらない 無味乾燥な時間と要求にこたえるだけの時間だけが流れる。

「どうしましたか?」
 くすくす笑っている私に赤光が尋ねる。
「もう疲れたの」
みんなが消えないなら私が消えればいい。
 悩む事わずらわしい関係に悩まなくてもいいならそれでいい。ずっと求められる自分を通すのは疲れたから。
「私がいなくても世界は廻る。逃げているかもしれないけど 今の世界では逃げ場所も無いから」
 日々無感情になっていく自分が止められないまま、これ以上生きていてもますます自分が消えてしまって嫌いになってしまうよりも先に
「、、本当にそれでいいのですか?」
 壊れ物を扱うように私の頬に触れる その指先は少し震えている。
心地よくて 確かな言葉はもらっていないけど安心して、張り詰めた気持ちがほぐれていく。
「あ、あの、、強く触れすぎましたか?」
 あたふたと手を話そうとするのを止めて こぼれる涙へ導く。かなわない願いと言葉にこたえて指の腹で涙をふき取ってくれる。理由も聞かずに 何も言わない私に優しい笑顔をうかべて待ってくれた。

「ここでいいですか?」
 私は今の世界に戻る事を伝えて その扉の前まで見送ってもらった。
「ありがとう」
「何がですか?」
 人形になるのも 消滅するのもできなかった。消去法かもしれないけどもとの世界に戻る事に少しだけど頑張れるって思えるようになったから。
ポケットから差し出した小さな石を手渡して
「ここに来た記念です。よかったら持って帰ってください」 
「あのね、、」
 赤光が何かをする前に私は現実世界へ戻った。

 私が欲しかった物 求めていた物は
「帰ってきたのね」
判別が分らないくらいの雑音がまた戻ってくる。そして今までどこにいたのか?今日するはずだった事を今からしろと要求を繰り返す。

 あぁ、、また繰り返しの日常。
いつかきっと私も誰かに愛される 愛してくれるようにしてきたけどもう無理はしない。
 綺麗に片付けられた部屋がよけい無菌状態を漂わせている 人間味がなくなってくる。
テレビを消す感覚で雑音の主から視線を逸らして 部屋をぐちゃぐちゃにしながら壊れてしまえ 何もかも 消えてなくなって そして

「もううんざりだよ!私は人形なんかじゃない 生んだ娘を何だと思っているの?こんな服も 髪型も 作った食事も大嫌い!!もうみんな消えちゃえ 大嫌い」
 落ちていた刃で着ていた服を裂いて 整えられた髪の毛を雑に切って反応を待つ。がちがちと腫れ物に触れるような目で私の反乱をみて やめろと要求するだけ。
 愛してくれなくてもいい ただ私を見て欲しかった。どんな事をしても私は私だってみてくれたらそれで私は。

 死ねばいい、、。ずたずたに引き裂かれた服と同じように 私が。
首の頚動脈に向けて 力を込めるまでには時間は無かったのかもしれない。薄れ行く意識の中で見えたものは、、、もう何も見たくない、、目のシャッターを塞いだ。

これでやっとこの痛みから解放されるそれだけで空を飛べそうな開放感が私を満たした。
ねぇ赤光 哀しまなくていいよ。やっと私は自分で選んで自由になれたんだから。

 惨劇が終わり 誰もいないはずの家に赤光は立っていた。
少女が小さな手のひらに握り締めていた石は赤い光を放ち 小さな手からも見えるほど鮮明に見える。
 持ち主の魂を吸い取って色を放つ バロメーターの石が赤く光るのは死

どうしてあの時止めれなかったんだろうか?こぶしを握り苛立ちを隠せない。突然もとの世界に戻るって言ってくれたから 嬉しくてそのまま行かせてしまった。
その結果が、、、頼まれた願いを叶えるしかもうできない。
耳元で伝えてくれたお願い
「私が死んだ時には石は赤光が私の存在していたことの記憶は肉体もろとも消して欲しい。憶えて欲しいのは赤光だけだから」

  止めようとして手を伸ばしたときにはもう届かなくて意志を持っている事があるほど、生きることが苦しいなんて確信する気は無い
ただ貴女が上にいった後どこかで誰かが産声を上げているのでしょうか?命の誕生はさざなみと同じだといわれていますから。
 ここまで貴女を追い詰めた世界に 自らを消滅するほどの思いと私はどこか似ていた。
「私は貴女のことを忘れません。決して。そしてこの館に来た人のことも」

 少女の顔がかすかに笑っている事が切ないほどはかなく 夜と心に染まる。その表情だけがせめてもの救いになればいい。