「風来」 BGM「Whish Matix」


何年、何日私はこの館で案内人としているのか?
そんなのは分らない。一日一日が新しい体験と十人十色の出会いと別れを繰り返す館で一度会ったら二度とその方とお会いする事はない、、そう思っていたのに

朝五時に目覚めて、いつものように服を選び お客様が来る準備をする。
「ようこそ蝋人形の館へ 案内人の赤光です」
きちっとおじぎをしてお客様を見上げる。
そうそれがいつもの始まり だったはず、、

「あ〜、、何者?」
ボーっとした目で興味なさ気に発言をした。
?見上げてそのお客様を見上げるとか、、髪の毛が白い 闇に位置する館ではその髪の色が鮮やかに見える。
私よりも身長が高く、俗に言うとだらしない胸元がはだけているだらしない服装とぴっちりとした黒ズボンをした男の人が立っていた。

「赤光です!」
何故ボーっとした人に二度同じ事を言わないといけないのか?
苛立ちを感じながらも次の言葉をつむぐ
「ここでは今世に疲れを感じ、、って聞いていませんね」
「あぁ、、ワリィ。別に俺今の世界に疲れを感じていないし」
会話をしているうちに眠気が消えたのか口調がしっかりしてきている。
そしてしっかりと聞こえるハイバリトンの甘く響く声。
「そうですね。貴方はそんな気がしませんよ」
くすっとわらいながらその人を見ていると その人は
「よくこんな朝っぱらから爽やかにいられるな。」と私の手を伸ばして
「これどこで売ってあるおもちゃ?現品限りなら千秋に持ってかえる」ケタケタからかい 笑い出した。

「おもちゃじゃありません!!」
身長178cm 平均よりは高いが色素の薄い肌と髪、線が細い体をみて言いようによってはおもちゃかもしれないかもしれないけど 
そこまではっきりと言われる事は初めてだった。

「貴方の名前は?」
少し怒りを覚えながらも平静を取り戻しつつ質問をする。
「俺の名前は水原鷹晶 21歳 新婚ほやほやのハンターだ」
新婚ほやほや、、って。
21歳私よりも2つ年下なのに、大人っぽく見える。
「どうしたらそんなに大人っぽく見られるのですか?」
朋華から童顔だって言われた事あるけど私にはない男らしさを感じながら じっと鷹晶さんを見つめる。
「一日一回好きな人とつながる事」
鮮明なワインレッドの目がいたずらにくずれていく。
「あ、、あのですね、、。お風呂じゃないんですから。ちゃんと答えてくださいよ」
なんてふざけた人なんだ、、と思っているとさらに
「これどうやって動いているのか?ねじ式?スイッチ?」
「って私の体をいじらないでください!」

お客様なのに(一応)声を荒立てている自分に気がついて気を静めていると
「あれ?赤光って香水つけている?」
首筋に鼻をちかづけて確認をする。
「そうですが、、」
「俺の前ではやめろ。臭気で頭がくらくらする」
「個人の自由じゃないですか」
まとわりついている鷹晶さんを放して言い返す。
え?パルファンは濃度が濃いから1,2滴しかつけていないからそんなに不快感を与えていないはずだ。なのにこの人は嫌そうな顔している。
発達した体、人を威圧するオーラを感じてまさか、この館に新入した者じゃ、、
気を取り直して
「折角ですから案内しますよ。どこがいいですか?」
少し考え
「赤光の部屋」
「私の部屋ですか?男の部屋を見ても楽しくないですよ」

といいながらも今までお客様には見せた事ない私の部屋を空けるや否や
「うわぁ天蓋付ベットだ」
スプリングがきいたベットに思いっきり飛び込み
「ブリキのおもちゃか、、、」
侵入者疑惑を持っているのに どう見たって遊んでいるだけじゃ、、?複雑な心境や思いが交差する。

「それに触らないでください!」
突然大きな声を出したから 鷹晶さんの手が止まって凝視をする。
「私の大切な人だから」
「これ人形だぞ。動かないのに も、、もしかしてソッチの趣味なの」
「これ以上彼女を侮辱するなら抹殺します」
彼の襟首と共に喉仏に力を込める。
 案内だけじゃなく館を守るために体術、武道を身に付けて侵入者を排除する力を持つために訓練を欠かすことはできない。
「私の事はともかく その人形に逝った事は取り消してください」
私の手をゆっくりはなして 心配するような目で私と人形を覗き込む。
「わけありなのか?」
 どうしてだろう?この人の目をみていると懐かしい感じがする。
「私はこの館に足を踏み入れた一人です」
 彼が侵入者だったとしても、そんなこと関係なく ただ言いたかった。
聞いて欲しかった 私がここに来た覚えている経緯とあの人のこともすべて、、。ここにいることも。

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 恋人を殺されまた独房へ入れられた 精神病院で入院という形で日々体を縛られ身動きも取れない中だった。
 食事も摂らずに眠らない 一日という時間の中ずっと彼女のことを考えて自分を追い詰め、苦しめ、自己嫌悪するだけの時間だけが過ぎていく。

「蝋人形の館の、、って野郎かよ」
 どこから入ってきたのか分らない初対面の男が私を見下しながら立っていた。
「いい若者が死にそうな目をして、、立ってついて来い」
縛られているから身動き、、拘束着が消えて手足も自由に動かせる。
どこへ?と開くはずのない独房を見ると、今までの景色じゃない全く新しい景色と沢山の扉と消えていきそうな背中を目で追いかけている。

体がどくりと動く どうしたんだろう?今ココであの背中を見失ったらいけないそんな衝動が駆り立てられた。
 慌てて立ち上がりその男の背中を追ってついていくと

「話は後だ。折角の料理が冷めるから食え」
 追いついたときにはキッチンとテーブルセットがある部屋と料理が並べられた部屋だった。
鼻をくすぐるいい香りがするけど 食べれない。
「崎朋華を失ってそうなったのか?」
 立ち尽くす私に男は冷めた声で呟いた。
「ど、、どうして貴方がその名前を?」
「ここに来る人の事は大体知っている。もちろんお前に深く関係していた人のこともだけどな」
 なれた手つきでタバコを取り出し火をつけた。
小さな時から母親から虐待を受けていた事も 私と会って恋人になってあんな死に方を迎えた事まで歴史の年号と出来事を発表するように煙とともに吐き出した。

「初めて他人から必要とされ、愛してくれた彼女だけど 本当にお前は彼女を愛していたのか?世間知らずな彼女だったから利用していただけだろ?」
次から次へと不快な言葉を発する男に 頭よりも先に手が動いた。
「違う!」
 だけど出会っていなかったら君はあんな死に方を、、。殴られるのは私じゃなきゃだめだ、、なのに どうして人を殴っているのか。
「へぇ、、。殴ったらすっきりしただろ?」
「え?」
「まだお前は死んでいない。そうやって俺を殴る事もできるんだからな。少しは食べろよ」
まさか今のは私を奮い立たせる為?誘われるがまま少し料理をつまみ 飲み込むと同時に意識がはっきりとしてきた。
失いかけた感覚がゆっくりと蘇ってくるのと同時にその男の顔が見えてくる。

「俺の名前は琥珀 ここの案内人だ。お前は?」
食事を済ませてお酒を飲む 琥珀と名乗る男は私の名前を聞いてきた。
「、、、、」
いくら考えても、思い出そうとしても 『名前』って物を持っていたけど思い出せない。
「自分の名前思い浮かばないんです」
小さく振り絞った声で告げると
「じゃ俺が思い出すまでの名前を付けてやるよ『赤光』だ」
「赤光?」
ちょうど光があたる場所に赤いテーブルに位置している場所だったから。
「俺も安易な名前だけどな。ここにいる理由もすべてだが」
 再度タバコを取り出し火をつける。その小さな火とともに私の第二の生活が始まる。そんな気がした。

 その後私は琥珀の事を先輩と呼び師として
仕事を見て、お客様の資料を集めて、館の手入れをして 下働きをしていた。
 その間に館を守る為のトレーニングと武器を作り強さを手に入れていくと同時に
先輩は意地悪で口が悪い人使いあらい人だけど この人がいるからまた生きようと思っている。
 この館で この場所で何かを得てまた君に会える時に 謝罪だけじゃない言葉と気持ちで笑えるように。

「そんなある日侵入者によって先輩は私を庇って死にました。そして2代目の案内人として私はここにいます」
 長い呼吸を止めて閉じていた目を開けると
「お姫様かわいそう、、、」
「全然聞いていませんね」
 この人って一体?全く違う事言われてもなんだかなぁ、、。ちょっと困りながらこの謎の男を見やると
「喉渇いたからお茶でもくれよ」
「半分文句いいたいですが 分りましたよ」
 空になったカップに新しい紅茶をそそいでいると、琥珀先輩を思い出してしまう。
この人使いの荒い所といい、、

「鷹晶さん下がってください!」
 侵入者特有の殺気と悪意を感じ鷹晶さんを守る位置に移動した。
「どうした?」
「鷹晶さん私が時間を稼ぎます。そこの扉から逃げてください。侵入者に捕らわれないよう くっ」
 この館で受けた傷は現世に体があったとしてもそのまま傷になってしまう。例えこの鷹晶さんが強い人でも深い致命傷を受ければ体は死を意味する。
「馬鹿言えよ。俺は逃げないぞ」
絡みつく悪意とのまれそうな殺気・・もしかしたら私一人の力じゃ太刀打ちできないかもしれない。だから目の前にいる彼だけでも。
「私は目の前で恋人と先輩が殺されたのを見ています。これ以上私の前で誰かが死ぬのを見たくありません」
 だから私は力が欲しかった。大切な人が目の前で殺されても何もできなかった無力で非力な自分に憎悪を向ける自分から変わりたかった。

 案内人になって毎日悩みを聞き、忠告をする日々その日々で居場所を作って 生き場所を求めてお客様を手助けしていると思っていても本当は自分が救われていた。
悔しくて、苦しくてどうしようもならない思いを涙で消えない・忘れられないあの日の映像。罪を犯してきた自分の居場所があるから私はまた生きていられる。
そしてその場所を人を守れるならば この体を投げ出してもかまわない。

「バーカ。誰が死ぬんだよ」
 侵入者の攻撃を片手で受け止めにやりと笑う。私よりも先に体が動いて的確に防げるなんて、、。
「お前何者だ?」
侵入者の言葉と同じ問いを持っていた。
「赤光!死ぬ事なんて考えるなよ。彼女が戻るまで いやすぐにそんな考え捨てちまえよ」
 さっきの話ちゃんと聞いていた。
「貴方は、、」
「俺は半分人狼の血があるからな。っとこいつ邪魔だな」
侵入者を無視して話し込む私達に再び向けられる攻撃を払いのけ首にかけていたロザリオを引きちぎって念を込める。
 ロザリオから刀に変形し侵入者に振りかざすと灰となっていった。
「お強いですね」
「だから俺を庇う必要なかったんだよ。」
「貴方は確かに強いです。だけど人狼の強さだけじゃありませんよね」
「うっ、、」
図星を付かれ困った顔をした その中に淋しさを見つけ
「よかったら話してくれませんか?」
お会いした時に微かに見えた淋しさ 少しでも受け止めて癒されれば・・その思いが伝わったのか鷹晶さんは私の目を見て少し考え ぽつりぽつり口が開く。

「昔 美咲って女の子と付き合っていたけど薬でいかれた男に殺され 目も前には血の世界だった。その後俺に戦いを教えてくれた師匠も病で血を吐いて死んでしまった。
2度もその光景を見て生肉やぴんくっぽい肉をみても食べきれない。狼の血が入っているのに・・・おかしいよな」
 疲れた吐息を出しながらもそんな時でも笑える貴方は強いのですね、、。
「今は千秋がいるから大丈夫だけど。あの苦しみは一生わすれられないだろうな」
 がっくりと肩を下ろし俯く姿が悲しくて その肩を包みこむ。一瞬ビックリしたけどゆっくりと私に体を預け何も言葉を交わさない時間が流れた。

「ありがとな赤光。この話あまり人にしていないから楽になったぜ」
「それはよかったです」
 部屋に戻ってさっき触れかけた蝋人形に向かって
「よかったら名前教えてくれないか?」
「朋華です。月を2つかいて。彼女とであって私は人間になれましたから」
「そうか、、」
今世に戻る扉へ案内をして 扉を開ける前に
「もう会う事もありませんが、、ここに迷いこんだ事に貴方と今日出会えたのもきっと何か意味があります」
「いいのかよ?これって決断を決めた人しか渡せない物なんだろ?」
「いいんです。少しでも貴方の心が癒されたと思うなら受け取ってください」
「わかった。ありがたくもらっとく」
 じゃあなと言い残し鷹晶さんは千秋って呼ぶ大切な人がいる世界へ帰っていった。
 先輩と似ている所 人使いが荒い所 そしてヤサシイ人と懐かしい先輩の思い出に浸りながらその日は終った。もう会う事もない、、、

「どうしてここにきているのですか?鷹晶さん」
と思っていたけど一週間に一度はどこからか鷹晶さんはこの館にくるようになった。
「方法はわからないけど、お前の顔見たいなって思ったら 何時の間にかここに」
ぽんぽんと頭を叩かれちゃかされている私はやっぱり意地悪な人に恵まれているのでしょうか?

「たーかーあーきーさん」
口では怒って反論と抵抗をするけど 鷹晶さん専用のカップをそろえようかと考えている。
「あれ?今日は香水の香りがしないけどどうした?」
「貴方が嫌がるから落としてきましたよ」
「そうか、、俺って愛されているんだなぁ」
「非生産的な物を求めないでください」
「って、、オイ赤光!!ダイレクトすぎるぞ」
「貴方相手にはこれくらいがちょうどいいんですよ」
 にっこり笑ってお茶請けのケーキを差し出した。
「ニコニコ笑っている割にはこわっ、、。」
「何か言いましたか?」
「なーんでもありません。赤光さん」
両手を上げて出したお茶をのみつつくつろぐ鷹晶さんをみながらどこか先輩の面影を重ねていた。

こうやって落ち着いてお茶を飲んで会話もできなかった頃は何も先輩に伝えられなかった。
 居場所を求めてばかりで自分の事ばかり考えていたから。
そして今ここに先輩がいたら鷹晶さんと同じような話をしているのか?それはわからない。ただ彼を大切な友人だって思っている。
失いたくない大切な人 唯一出会えるこの場所もこれからも守りたい。この先、未来はわからないけど ただ前を見て歩くだけ。