ミニ台風風我青蓮登場 BGM「Jungle Jungle」
不思議空間『蝋人形の館』の長い廊下を裸足で走る少年は息も切らない 安定した速さで目的の場所へ向かっている。
・・・ずっと会いたかった やっと会える今日
「やっとオレも力をコントロールできるようになったんだ」
立ち止まって小さく拳を握り また走り出した。前みたいに立ち止まりたくないから
「ただいま」ちょっと普通すぎるかな?じゃ「こんちゅーす」砕けすぎかもしれない。
照れくさくて鏡を見ながら、普段は気にかけない髪形や服装の乱れを正してみたりする。
「いざ出陣」
小声で気合を入れて扉から溢れる香水の匂い 適度に甘くてその中に独自の香りも混じっている。
何時かいでも心地よい香りをまといながら 二年前と変わらない部屋に懐かしさがこみ上げてくる。
甘い香りのなかに調和する空間と部屋の主・・
「なんだ・・てめぇは?」
「すごい。完璧に死角を突いたのによけたなんて」
赤いワインレッドの目がオレをにらみつけながら身を構える。
両手でばかでかい侵入者に向かって拍手をしながら 次に仕掛ける攻撃とパターンを連想させつつこいつはどんな技をもっているのか?オレよりも強いのか?
久々に強い相手に対しての好奇心もあったのかもしれない。
「お前けっこう強いかも♪」
素手から武器を取り出すかと思ったが、相変わらず素手でオレが来るのを待っている。
「ぢゃ先手必勝」
侵入者にジャングルで鍛えた足とスピードで接近し背後に回りこんで、手から水をだしダメージを与える。
「こっの クソガキ」
オレの出した水を振り払うように銀色の髪の毛を右左に動かす。
その様子を見ながら水浴びした犬を思い出してしまった。いやこんなにばかでっかいから狼か?
「水芸で俺を倒せると思っているのか?」
かけていたロザリオを剣にかえながらじろりとオレを威嚇する。
「今のは挨拶代わりで次は本気で行くよワーウルフ」
ワーウルフとは 人間と狼のハーフで寿命は3,400年 力は人間の数倍あり特殊能力を持つ。
「この館と赤光兄ちゃんはオレが守る」
水を変形させ侵入者の体を縛る鎖をイメージさせ 水を解放させながら侵入者に近づこうとしたら体が下に下がっていった。
「にぎやかだと思ったら帰ってきたんですね 青蓮」
「赤光兄ちゃん!?」
にっこり笑いながらオレにかけていたG(重力)を解いてくれた。
「私の部屋を水浸しにしないでくださいね。あとこの人は侵入者じゃなくて私の友人ですよ」
「え!?こいつが」
ワーウルフで戦闘経験もある動きとオーラを放っているからてっきり侵入者かと思った。
「そーだ人の話も聞かずに 水ぶっかけられたよ赤光」
「あ〜・・・ちょっと待っていてください。今タオル持ってきますから」
赤光兄ちゃんは軽く紹介をし、そそくさと部屋を出て行って 俺と無駄に大きい男を残していった。
「お前・・」
鷹晶って言う奴が口を開いた。
「ナニ?」
「ちびだな」
「・・・・って てんめーー。」
こいつ琥珀並みの口の悪さだな。
「16歳にしては発育していないからさ」
館から出て成長したのは3年間 13歳といっても館の中の時間は止まっているから賞味どれくらい生きているのかわからない。
6cm身長も伸びたのに16歳ってもっと大きいものなのかな?同年代の人間と会ったことないから検討もつかない。
「う・・うるさい。今の時代はコンパクト製品同様人間もコンパクトなんだよ!!」
自分でもむちゃくちゃな事を言っているけど何も反論できないのはもっと癪に障る。
「もう16だ。大人だ」
「ふ〜ん。じゃ証拠見せろよ」
ワインレッドの瞳が悪戯っぽく歪み。綺麗な目 男のオレから見てもかっこいいけど 超口わる〜〜。
「言っとくけど学校とか行っていないから生徒手帳とかないぞ」
「じゃ生年月日を示す物でもいいんじゃねぇ?」
「ねぇよ・・」
「あん?」
「無いモンはないんだ」
生年月日を示す物なんて何もない。ただ思い出せることはジリジリと照りつける太陽と綺麗な空気と森林そして父さんと母さんの顔
「親がどうしたんだ?」
知らずに口走っていたのに慌てて口を塞いで視線と距離をとろうと思ったときに
「はい。鷹晶さん。青蓮いぢめないでくださいね」
「赤光兄ちゃん♪」
助け舟を出してくれたみたいに話に入ってきてくれた。
「お茶の用意ができましたからキッチンに行きませんか?」
柔らかい笑顔を浮かべ キッチンへ促してくれた。
「さっき二人で掃除していたんだけど鷹晶って几帳面なんだよ」
「ああ。そうですね 外見で勘違いされるけど結構まめなんですよ」
くすくす笑いながらティポットから紅茶を注ぐ。
それをなれた手つきで受け止める鷹晶を見てなんか・・大人って言う言葉がにあう落ち着きやかっこよさ 自分には無いものを感じてしまう。
「まぁ千秋と一緒に住んでいるから」
「千秋ってお前恋人いるのか?」
さっきまではぶすっとしていた顔だったのがみるみる溶けるアイスクリームのように崩れていった。
いやそーとべろべろと言った方がいいかも。
「めっちゃ可愛くてさ。仕草、声、何をとっても」
他人の事を深く強く求める気持ち 最大級の思いを恋と赤光兄ちゃんは言っていたけどオレはまだ分らない。だからそんな相手がいる鷹晶が羨ましくて
「よくお前の恋人になってくれたよな」
「まぁな」
嫌味に対して素直に頷いて
「ぐれるし、家の関係をぶち壊しかけたし、友達ともこじれかけて 無駄にだらだら生きていたけど。千秋が降った日から日常がどんどん変わっていって 俺自身も変わっていって」
気がつけば鷹晶は千秋と言う人の事好きになっていたみたいだ。(のろけはなしをまとめて)
予告も先刻もなく 偶発的に起こる事件のように鷹晶を変える事件がその千秋って言う人の魔法
黙っていればかっこいい顔だけど 時にこんな風にやさしい顔になっているのも きっと。ちょっと初対面のイメージの嫌な奴からちょっぴりだけどいい人かなって思いかけた。
「そっか・・。ちょっとオレお前の事羨ましい」
「まぁな。シークレットシューズはいていなくても190cm以上あるから」
こ・・こいつって
「鷹晶さん。そういう意味じゃなくて」
困ったような顔しているけどしっかり笑っている赤光兄ちゃん
「身の回りの人間関係を繋げていったから 最近両親とかしょっちゅう俺ん家にいって冷やかしに来て面倒」
めんどう?
両親が・・・・?ぴきっと何かが壊れた。
「お前、両親父さんや母さんが迷惑なのか?邪魔なのか?」
「おい?何怒っているんだ?」
「青蓮!」
しかりつける強い口調でとがめれれるが止まらない。
「存在がうっとうしいって思うほど近くにいない奴だっているんだよ・・・」
イライラする。さっきの言葉が引っかかって
「・・ちょっと帰ってきたばかりで疲れているんですよ。ね。青蓮」
肩にかけられた手を反射的に払い
「何でワーウルフって重いもの背負っているのに笑っているんだよ?何でなんでも手に入れているんだよ?」
分っている赤光兄ちゃんが止めてくれているのも 鷹晶にぶつける感情も
「別に俺は好き勝手に生きてきて・・でもな・・すべて手に入れているわけじゃない。守りぬけない者もあった」
つけていたロザリオを握り歯をかみ締める。
「鷹晶さん・・」
赤光兄ちゃんは知っているみたいで目を細めて奴を見る。
守り抜けない物・・大切な物 だけど
「オレの力って生まれつきなんだ」
赤光兄ちゃん、琥珀以外に話をしたくなった。自分の口から こんなに嫌な奴なのにどうして言いたくなったのかわからないけど。
ふっと頭の中にイメージさせた物が水になって出てくる。
「・・。ええ。私は今は管理人だから力を持っています。生身の人間でいくら体を鍛えても特殊能力がないと侵入者に太刀打ちできないから 管理人は代ごとに力をもらいます」
さっと手を上げると床が少しへこんだ。
「私の場合は<重力>を。人間から見たらそういう能力は脅威であり 一部では貴重な」
赤光兄ちゃんよりも先にオレは口を開いた。
「実験体としてね」
「!?」
唖然とした顔でオレをみる鷹晶。
「生まれついての能力者 どこから聞きつけたのかあいつ等は・・オレの両親は殺された」
能力を知った時に二人は奇異の目でみないで今までどおりに接してくれて 能力を気持ち悪がっていた部分をかき消すほど優しい言葉と態度で接してくれた父さん、母さん。
「オレはあいつ等を・・許さない」
今でも目を閉じたら広がる森林の緑から赤に染まった血と景色と笑い声
「お前が生きるのは復讐のためか?」
「鷹晶さん!」
「そうだった。この力を使えば果たせるのかもしれないってここに来た時はそう思っていたけど。今は赤光兄ちゃんがいるから 前よりも復讐なんて関係なくなったよ」
「そうか・・。さっきは大人じゃないって言ったけど取り消すわ」
「な、なんだよいきなり」
なくなったものを埋めようとしていただけど全く同じ物は手には入らない。もう一生かけても・・。
だからそれ代わる いやそれ以上のものを手に入れることで生きていく。生きていけた
「失礼っ」
さらりとズボンを延ばして
「まだまだだな。つるつる・・・」
やっぱりやっぱりこいつ嫌な奴だ ちょっとでも見直さなければよかった。
「な、なんだよ。わりぃかよ!」
げらげら笑い出す鷹晶の足を踏みつけぜったい ぜったいぜーったい奴よりも大きくなって踏み潰してやると野望が生まれた日が館に戻った出来事だった。
青蓮が寝静まった後 赤光が鷹晶を残して二人で晩酌をしていた。
「鷹晶さん。刺激しないでくださいよ」
「あいつを見て昔の抜け殻時代の青臭さを感じたんだ。そしてあの力といい わけありかなって」
赤光はお酒に弱いけどその日はどうしても飲まないと気がすまなかった。高そうなワインを惜しげもなく開けて。香りを少し楽しんでぐっと飲み込む。
「青蓮は愛情が欲しい時にあんな事が起きてしまって、両親の愛情があったから押さえきれていたけど」
目を閉じてもう一杯グラスにワインを注ぐ。
「このワイン青蓮が生まれた年のものなんですよ。一緒に飲み頃になったら飲もうと思っていましたが」
ここから先はその時に言おうと決めていたことです。小さく内緒話をするくらいの小さな声を鷹晶は受ける。
「ばっか。一人で抱え込むなよ。今は案内人じゃなくてもいいんだから」
「確かに目の前で殺されたって言っていた両親だけど死因は 水なんです」
撃たれたけどまだ生きている事を認知する余裕もなく 青蓮は無意識でコントロールしてきた水を放出してしまってすべてを飲み込んでしまった。
「・・・それはあいつ知らないんだよな?」
「知ったらどうなると思いますか?やっと笑えるようになったのに 自分の能力だけじゃなく自分の存在時代も呪うようになる生き方をしてしまう可能性もあるんですよ」
「だからお前は待っているんだな。その事を知っても立てる時期が来るのを」
「もしその日が来る前に知ってしまって、何かがあったときには私でも止められないかもしれません」
生まれながらの能力者と受け継いできた力 天性の存在にどう出てくるのか見当がつかない。
「それに力の方が持ち主の意思に関係なく動いています。青蓮の意志とは全く関係なく青蓮を守るためならなんでもする。自由を望んでいるのに 能力が鎖となっている。」
まだ若い青蓮を表しているように飲みごろより先にあけたワインからは硬く苦い味がでてくる。それを二人はこれから先の事は何も話さずにただ飲んでいた。
一滴も残さないであけたワインを見ながら
「今度は青蓮と飲めるようになったらいいな」
「ええ・・。その時は今日みたいな酔い方はしたくないですね」
軽く笑いながらワインをしまっていつもの紅茶を入れて飲んだ。いつかきっと鎖を鎖と戒めない日が来る事を願いながら。